【中学3年数学(二次関数)】二次関数では必須の平方完成 – やり方と成り立ちをわかりやすく解説


- 平方完成のやり方が分からない人
- 平方完成のやり方は知ってるけど、どうしてそういうやり方が許されるのか理由が分からない人
- 数学的な式変形の手順に違和感があり、もっと一段階ずつ順を追って理解したい人
このページでは、”平方完成”のやり方を解説します。
平方完成というのは、すでに中学数学で習っている様々な、当たり前の約束事を使うことによって成り立っています。
しかし、学校では結論としての平方完成のやり方を学ぶだけであり、平方完成のきちんとした手順や成り立ちは分かっていないという人もいるのではないでしょうか。
そこで、平方完成が成立する過程をもっと分かりやすい所から解説することで、平方完成の仕組みを理解してもらいたいと思います。
また、式変形というものが「このようにして成り立つんだ」ということを知ることで、数学の他の分野でも、数学的な理解を深めてくれるでしょう。
平方完成とは、二次関数の一般形から標準形へ書き換えるためのテクニック
平方完成の目的は、
二次関数の一般形で書かれた式を、標準形へと書き換えること
にあります。
二次関数の一般形というのは、
\begin{align}
y = ax^2 + bx + c \quad \text{(\(a\)は\(0\)ではない)}
\end{align}
【例】
という書き方になっているものを言います。
二次関数の標準形というのは、
\begin{align}
y = a(x-p)^2 + q \quad \text{\(a\)は\(0\)ではない)}
\end{align}
【例】
という書き方になっているものです。
一般形で書かれた式は、必ずどんな式でも標準形に書き直すことができます。
ただし、そのためには一工夫が必要になり、その工夫が平方完成という式変形の方法です。
平方完成というテクニックを使うことで、一般形を標準形に書き直すことが出来るんですね。
で、じゃぁなんでそんな書き換えをしたいのかと言えば、
標準形が分かればグラフの形が分かるから
です。
どこに頂点があり、その座標はどこなのか。
式が標準形になれば、見ただけですぐに分かるようになります。
だから、より分かりやすい式にするために平方完成をするわけです。
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一般形を標準形に書き換えるやり方
ひとまず、皆さんが教わっているだろうやり方を使って、一般形を標準形に書き換えてみましょう。
一般形の、
\begin{align}
y = ax^2 + bx + c
\end{align}
が、標準形の、
\begin{align}
y = a(x – p)^2 + q
\end{align}
という形になったら成功です。
例題として、
\begin{align}
y = 3x^2 – 12x + 6
\end{align}
を考えてみます。
これは一般形の形をしています。
まず標準形の\(a(x – p)^2\)っぽい形にするために、かけ算の分配法則を使って、このように式を書き換えます。
\begin{align}
y = 3(x^2 – 4x) + 6
\end{align}
一般形の\(x^2\)の項と\(x\)の項から\(3\)をかっこの前に出しただけです。
そうしたら次に、かっこの中に\(x\)の係数である\(4\)の半分の二乗をプラスとマイナスで一つずつ用意します。
\begin{align}
y = 3 (x^2 – 4x + 2^2 – 2^2) + 6
\end{align}
これは、
\begin{align}
y = 3(x^2 – 4x + 4 – 4) + 6
\end{align}
となるので、かっこの中の\(x^2 – 4x + 4\)の部分を因数分解をすると、
\begin{align}
y = 3 \left\{ (x – 2)^2 – 4 \right\} + 6
\end{align}
と書き換えられますね。
そして、かっこの中身を展開すると以下ようになります。
\begin{align}
y & = 3 \left\{ (x – 2)^2 – 4 \right\} + 6 \\
& = 3(x – 2)^2 – 12 + 6 \\
& = 3(x – 2)^2 – 6
\end{align}
これで、標準形になりました。
人によって教え方も教わり方も違うと思いますが、だいたいこうやって平方完成をするんだよと、教わっていると思います。
しかしこの例題は、平方完成がしやすい形に調整されていますし、どうして\(x\)の係数の半分の二乗のプラスとマイナスを一つずつ用意するのかは説明されていません。
ですのでこれからは、例題を用いずに、記号のまま一般形を標準形にすると共に、途中の手続きがどうして成立するのかを解説していきます。
どうして平方完成の式変形が成り立つのかをわかりやすく説明
\begin{align}
y = ax^2 + bx + c
\end{align}
という一般形から、どうやったら、
\begin{align}
y = a(x – p)^2 + q
\end{align}
という標準形に書き換えられそうか?
最初の一歩は、なんとなくで始まります。
とりあえず、\(a(x – p)^2\)という形になるようにパーツを作ってみることにするのです。
人によっては数学の式というのは、厳密にこういうやり方で変えねばならないということが決まっていると思っているかもしれませんが、意外とそうでもありません。
数学の式変形パターンは無限です。
無限に存在する式変形のうち、どういう形に変えていきたいかというのは、数学を使う人間が決めます。
ですから、この一般形を標準形に変えるために、どこから手を付けるかも人間がなんとなくで決めてかまわないのです。
一般形と標準形を見比べてみると、まず標準形では\(a\)がかっこの外側に出ていることが分かります。
こういう式を作るための道具として、私たちはすでにかけ算の分配法則を教わっています。
かけ算の分配法則(厳密にはこの逆)を使えば、共通因数を外に出して、残りをかっこの中で掛け合わせる事が出来ることを知っています。
だからこれを使ってみましょう。
しかし、使ってみましょうと言っても\(bx\)にも\(c\)にも因数\(a\)が含まれていないように思えます。
かけ算の分配法則を使うためには、共通因数が必要でしたね。
ないのなら、作ってしまいましょう。
\(bx\)と\(c\)に因数\(a\)を追加すればいいのです。
そのために、まず以下の式を考えましょう。
\begin{align}
a \times 1 = a
\end{align}
\(a \times 1=1 \times a=1a=a\)ということは、中学数学の早い段階で教わっているのではないかと思います。
また、どんな数を\(1\)倍しても数は変化しないということは、小学校でも学んでいるはずです。
それから、
$$\frac{a}{a}=1 \quad \text{(\(a\)は\(0\)ではない)}$$
ということも、すでに習っているはずです。
分子と分母が同じ数である場合、その数が\(0\)でない限り、答えは\(1\)になります。
ということは、この二つをあわせて考えれば、次のような式が成り立ちます。
\begin{align}
\frac{a}{a} \times bx & = 1 \times bx = bx \\
\frac{a}{a} \times c & = 1 \times c = c
\end{align}
この式は当たり前過ぎて違和感があるかもしれません。
もしここで違和感を感じるのであれば、いったんここでよくかみ砕いて理解し、納得できるまで考えてみましょう。
今までこんな考え方をしたことがないという人もいるでしょう。初めての人にとっては、すごく違和感のある式だと思います。
教わったことをつなぎ合わせれば当たり前のことでも、新しい視点を受け入れるには時間がかかるのも仕方ありません。
さて、話を進めるため、納得できたことにしましょう。
ということは、私たちは一般形を次のように書き換えることが出来るようになりました。
\begin{align}
y & = ax^2 + bx + c \\
& = ax^2 + \frac{a}{a}bx + \frac{a}{a}c \\
& = ax^2 + a\frac{b}{a}x + a \frac{c}{a}
\end{align}
さあどうでしょうか。
\(bx\)の項にも\(c\)の項にも\(a\)という共通因数が生まれましたね。
これで、かけ算の分配法則を使うことができます…が、実はこれはやり過ぎなので、いったん書き直します。
\begin{align}
y = ax^2 + a\frac{bx}{a} + c
\end{align}
\(c\)の項から\(a\)を取り除きました。
なぜかと言えば、目標の標準形である\(a(x – p)^2 + q\)の形を見てもらうとわかりますが、\(c\)の項はかけ算の分配法則でかっこの中でまとめられていないのです。
\(a\)という共通因数を必要としているのは\(bx\)の項だけですから、\(c\)の項は\(a\)を用意しなくもかまいません。
さて、この式のはじめの2つの項から共通の\(a\)を前に出すと、
\begin{align}
y = a \left( x^2 + \frac{bx}{a} \right) + c
\end{align}
という式ができます。
作りたいパーツは\(a(x – p)^2\)ですから、もう一工夫が必要です。
ではどう工夫するか?すでに教わった約束事を使って、それっぽい形が作れないものでしょうか?
そこで、
\begin{align}
(x – a)^2 = x^2 – 2ax + a^2
\end{align}
の展開式を思いだしましょう。
この式を今回考えている式にあてはめて考えます。すると、
\begin{align}
\left(x – \frac{b}{2a} \right)^2 = x^2 -\frac{b}{a}x + \left( \frac{b}{2a} \right)^2
\end{align}
という式が成り立つことがわかりますよね。
ですから、\(a \left(x^2 + \frac{b}{a}x\right) + c\)のかっこの中身が、\(x^2 – \frac{b}{a}x + \left(\frac{b}{2a}\right)^2\)であれば、\(a \left(x – \frac{b}{2a} \right)^2 + c\)と因数分解が可能になるはずです。
しかし、「そういう形だったら因数分解できるんだけどなー」と言ってみた所で、実際はそういう形をしていません。
でも、こういう問題はさっきも解決しました。
\(a\)という共通因数がないからかけ算の分配法則が使えない。
じゃあ作っちゃえと言ってここまで進んだわけです。
だから、今度も作ってしまいましょう。
\begin{align}
a + 0 = a
\end{align}
のように、どんな式に対してであれ、\(0\)を足しても式は変わりません。
そして、
\begin{align}
a – a = 0
\end{align}
も当たり前です。
じゃあ、これを合わせて考えます。すると、
\begin{align}
a(x^2 + \frac{b}{a}x ) + c & = a(x^2 + \frac{b}{a}x + 0) + c \\
& = a(x^2 + \frac{b}{a}x + \left(\frac{b}{2a} \right)^2 – \left( \frac{b}{2a} \right)^2) + c
\end{align}
\(\left( \frac{b}{2a} \right)^2 – \left( \frac{b}{2a} \right)^2\)を元の式に足していますが、これはそもそも\(0\)なので、この式変形はまったく問題ありません。
ということで、
\begin{align}
y = a \left\{ \left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 – \left(\frac{b}{2a}\right)^2 \right\} + c
\end{align}
というように式を書き換えることが出来るようになりました。さらに展開するとこうなります。
\begin{align}
y = a\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 + c – a \left(\frac{b}{2a} \right)^2
\end{align}
作りたいパーツは\(a(x – p)^2\)ですが、できあがったのは\(a\left(x + \frac{b}{2a}\right)^2\)です。
かっこの中がマイナスではなくてプラスになってしまっています。
さて、これはどうしたらいいでしょうか。
注目するのは、使われている記号の違いです。
標準形では\(p\)が使われていますが、作り出した式は\(a\)とか\(b\)が使われています。
例えば、\(3(x – 2)^2 – 6\)の時、どうしてこれが標準形\(a(x – p)^2 + q\)と同じ形になったとみなせるかと言えば、
\(a\)に\(3\)を当てはめ、\(p\)に\(2\)を当てはめ、\(q\)に\(-6\)を当てはめれば、標準形と同じ形になっているからです。
でも標準形では\(+q\)となってるのに、\(-6\)を当てはめるなんておかしいと感じるかも知れません。しかしこれは、
\begin{align}
+ (-6) = -6
\end{align}
のように、\(-6\)を足していると考えれば、これでよいことがわかるでしょう。
同じように、\(a \left( x + \frac{b}{2a} \right)^2 + c – a \left( \frac{b}{2a} \right)^2 \)もまた、
\(a\)に\(a\)を当てはめ、\(p\)に\(-\frac{b}{2a}\)を当てはめ、\(q\)に\(c – a \left( \frac{b}{2a} \right)^2\)を当てはめれば、標準形と同じ形になっているので、これも問題ありません。
さて、そろそろ大詰めです。
\begin{align}
y = a \left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 + c – a \left( b/2a \right)^2
\end{align}
の段階で、\(a(x – p)^2\)の形は満たしました。
次は\(+q\)の部分を作らないといけません。
しかし、作るも何も、実はもう完成しています。
あとは分数の計算をするだけです。
\begin{align}
c – a \left( \frac{b}{2a} \right)^2 & = c – a \frac{b^2}{4a^2} \\
& = c – \frac{ab^2}{4a^2} \\
& = c – \frac{b^2}{4a} \\
& = \frac{4ac}{4a} – \frac{b^2}{4a} \\
& = \frac{4ac – b^2}{4a}
\end{align}
です。
ですから、これで一般式の平方完成がおわり、
\begin{align}
y = a \left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 + \frac{4ac – b^2}{4a}
\end{align}
というように、標準形へと書き換えが完了しました。
平行完成の公式の確認
では、これが本当に正しいのかどうか、確かめてみましょう。
一般形である、
\begin{align}
y = 3x^2 + 9x + 3
\end{align}
の式を平方完成で、標準形にしましょう。
先ほど求めた平方完成の公式、
\begin{align}
y = a \left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 + \frac{4ac – b^2}{4a}
\end{align}
にそれぞれ当てはめていきます。
\(a\)には\(3\)を当てはめ、\(b\)には\(9\)を当てはめ、\(c\)には\(3\)を当てはめます。
すると、
\begin{align}
y = 3 \left(x + \frac{9}{6} \right)^2 + \frac{36 – 81}{12}
\end{align}
となります。これをちょろっと計算すると、
\begin{align}
y = 3 \left(x + \frac{3}{2} \right)^2 – \frac{15}{4}
\end{align}
になります。
では、もう一つだけ例題を。
\begin{align}
y = 3x^2 – x + 1
\end{align}
を解きましょう。
\(a\)には\(3\)を当てはめ、\(b\)には\(-1\)を当てはめ、\(c\)には\(1\)を当てはめます。
すると、
\begin{align}
y & = 3 \left(x – \frac{1}{2a} \right)^2 + \frac{12 – 1}{12} \\
& = 3 \left(x – \frac{1}{6} \right)^2 + \frac{11}{12}
\end{align}
になります。
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数学の式変形には、すべてに理由がある
平方完成の一般的な解説を見ていると、みんな「\(x\)の係数の半分の二乗のプラスとマイナスを用意する」ことから始めています。
「どうしてそんなことをするのか」、「なぜそうしていいのか」、そのようなことを説明している教科書や参考書は見たことがありません。
しかし、すべての式変形にはちゃんと理由があるのです。
その理由を知ることで、それ以外の同じような場面でも同じ手続きをしていいことに気づくでしょうし、似たような場面だけれども異なる条件の時にはそのような手続きが許されないことも理解できるはずです。
応用力が身につくということです。
確かに、数学の式の変形は非常に面倒が多く、当たり前のことですら実際に数式で証明しようとすると手間がかかることがあります。
そういう手間を省く方が学習効率を高められるという考え方はあるでしょうが、理由も分からずに、おまじないのように手順だけ教わっても、応用は利きそうにありません。
特に数学でつまずいている人の方が、理屈や成り立ちを必要とするように思えます。
数学ができなくて困っている人でも、公式を暗記する学習方法からなぜそうなるかを考えて公式を理解する学習方法にすれば、理解ができるようになるかもしれません。
この記事がそれらの方々の助けとなれば幸いです。
まとめ
それでは最後におさらいとして、このページの重要な部分をまとめておきます。
- 二次関数の平方完成とは、一般形を標準形に書き換えるためのテクニックである
- 平方完成の式変形の手順は、すでに教わったことを一つ一つ積み重ねたものを使えば簡単に理解できる
- 数学の式変形は、全てちゃんとした理由があるので、それらを一つ一つ理解していけば、暗記に頼ることなく、数学を理解できるようになる
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