天才数学者が考案した二次方程式・因数分解の新しい解き方 – これは簡単で面白い!

天才数学者ロー氏が考案した二次方程式や因数分解に使える新しい解き方を紹介しています。
この解法の特徴としては、
- あの覚えづらい解の公式を使わずに解けてしまう
- 比較的簡単である
ということです。
何より、「なるほどね」と思える面白い発想なので、考え方を楽しんでもらえればと思います。
二次方程式の新しい解き方
ここでは、天才数学者ロー氏が考案した、
「二次方程式もしくは因数分解の新しい解き方」
を紹介します。※考案した数学者についての紹介は記事の最後に載せています。
こんな問題があったらどう解く?
いきなりですが、以下の二次方程式を新しい方法で解いてみましょう。
次の二次方程式を解け。
$$x^2 + 3x + 1 = 0$$
みなさんは、通常、この二次方程式を解くときはどうしますか?
この二次方程式を、
$$(x + \text{〇})(x + \text{□}) = 0$$
の形にできれば、〇と□がわかります。それさえわかれば、\(x\)は、
$$x = – \text{〇}, \quad – \text{□}$$
のように答えは出ますね。
このとき、〇と□は次の2式の関係を満たしているはずです。※これがわからい人は以下の補足を参照してください。
- \(〇 + □ = 3\)
- \(〇 × □ = 1\)
結局、二次方程式とは、この2つの式を満たす〇と□を見つけることになります。
$$(x + \text{〇})(x + \text{□}) = 0$$
の左辺を展開すると、
$$x^2 + (〇+□)x + (〇×□)= 0$$
となるので、これを例題の式と照らし合わせれば、\(〇 + □ = 3\)と\(〇 × □ = 1\)が成り立てばよいことがわかる。
ですが、少し考えたくらいでは、2式を同時に満たす適切な〇と□は見つかりそうにありません。
そこで、通常なら「解の公式を使って解く」という人が一番多いのではないかなぁと思います。
$$x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a}$$
この公式に、
- \(a = 1\)
- \(b = 3\)
- \(c = 1\)
を入れてしまえば、答えがわかります。
しかし、ここでは、公式に頼らず(公式を覚えていなくても)解ける新しい方法で解いてきます。
新しい解き方で解いてみよう!
例題の二次方程式を解くためには、
- \(〇 + □ = 3\) … ①
- \(〇 × □ = 1\) … ②
の両式を満たす〇と□を考えるのですが、まずは式①だけに注目しましょう。
①式を満たすための、〇と□は以下のように表現できます。
\begin{align}
\text{〇} &= \frac{3}{2} + u \cdots ③\\
\text{□} &= \frac{3}{2} – u \cdots ④
\end{align}
ここで、\(u\)は定数であり、どんな値でも取ることができます。
なぜかというと、上の〇と□を足すと、
\begin{align}
\text{〇} + \text{□} &= \frac{3}{2} + u + \frac{3}{2} – u\\
&= \frac{3}{2} + \frac{3}{2} + u – u\\
&= 3
\end{align}
となり、\(u\)の値に関係なく、絶対に\(3\)となるからです。すなわち、〇と□を③と④のように置いておけば、必ず①式を満たしてくれることになります。
次に、②式(\(〇 × □ = 1\))を考えましょう。この式に、③と④式で表現した形を〇と□に代入します。すると、
\begin{align}
〇 \times □ &= 1\\
\left(\frac{3}{2} + u\right) \times \left(\frac{3}{2} – u\right) &= 1
\end{align}
となります。これを\(u\)について解くと、
\begin{align}
\left(\frac{3}{2} + u\right) \times \left(\frac{3}{2} – u\right) &= 1\\
\frac{9}{4} – u^2 &= 1\\
u^2 &= \frac{5}{4}\\
u &= \pm \frac{\sqrt{5}}{2}\\
u &= + \frac{\sqrt{5}}{2}, \quad – \frac{\sqrt{5}}{2}
\end{align}
となります。
これで、\(u\)が決まりました。
あとは、この\(u\)を、③,④式に代入すれば〇と□がわかりますね。※\(u\)はプラスとマイナスの二つがありますが、どちらか一つを選んで代入すればオッケーです。その理由は、二つの\(u\)は符号が違うだけなので最終的に出てくる答えは〇と□が入れ替わるだけだからです。ここではプラスの方を使うことにします。
\begin{align}
\text{〇} &= \frac{3}{2} + u = \frac{3}{2} + \frac{\sqrt{5}}{2} = \frac{3+\sqrt{5}}{2}\\
\text{□} &= \frac{3}{2} – u = \frac{3}{2} – \frac{\sqrt{5}}{2} = \frac{3-\sqrt{5}}{2}
\end{align}
よって、例題の二次方程式は、
$$\left(x + \frac{3+\sqrt{5}}{2}\right)\left(x + \frac{3-\sqrt{5}}{2}\right) = 0$$
と変形できることがわかり、方程式の解としは、
\begin{align}
x &= \frac{-3-\sqrt{5}}{2}, \quad \frac{-3+\sqrt{5}}{2}\\
&= \frac{-3 \pm \sqrt{5}}{2}
\end{align}
となります。※答え\(x\)は、〇と□に\(-1\)を掛けたものであることに注意
解の公式で答えをチェック
上で導いた答えが、正しいかどうかを解の公式を使って確認しておきます。
解の公式は、
$$x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a}$$
です。
また、例題の二次方程式は、
$$x^2 + 3x + 1 = 0$$
ですので、解の公式に、
- \(a = 1\)
- \(b = 3\)
- \(c = 1\)
を代入すると、
\begin{align}
x &= \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a}\\[2mm]
&= \frac{-3 \pm \sqrt{3^2 – 4 \times 1 \times 1}}{2 \times 1}\\[2mm]
&= \frac{-3 \pm \sqrt{5}}{2}
\end{align}
です。
新しい解き方で解いた答えと同じになりましたね。
解の公式を使う方法と新しい方法で、どちらが早く解けるかと言われれば、解の公式です。
しかし、解の公式ははじめに覚えるのが少し大変ですよね。その点、新しい解き方は公式を覚える必要はありません。
そして、何より解き方の発想が楽しいですよね。「なるほどな~」と楽しんでいただければ幸いです。
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新しい方法でなぜ解けるかを証明
一般化した式で考える
ここで、なぜこのような方法で解けるのかを証明しておきます。
上では例題として、係数\(b\)や\(c\)に数値が入った形を考えましたが、ここでは文字のまま置いておきます(これを「一般化する」と言います)↓
$$x^2 + bx + c = 0$$
この解\(x\)を〇と□とすると、これらは以下の2式を満たす必要がありました。
- \(〇 + □ = b\) … ①
- \(〇 × □ = c\) … ②
〇と□は、
\begin{align}
〇 &= \frac{b}{2} + u \cdots ③\\
□ &= \frac{b}{2} – u \cdots ④
\end{align}
としておけば、①式を必ず満たすことができましたね。〇+□をしたときに\(u\)が打ち消し合って消えてくれるからでした。
続いて、②式に上の〇と□を代入して、
\begin{align}
〇 \times □ &= c\\
\left(\frac{b}{2} + u\right) \times \left(\frac{b}{2} – u\right) &= c
\end{align}
これを\(u\)について解くと、
\begin{align}
\left(\frac{b}{2} + u\right) \times \left(\frac{b}{2} – u\right) &= c\\
\frac{b^2}{4} – u^2 &= c\\
u^2 &= \frac{b^2}{4} – c\\
u &= \pm \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}\\
u &= + \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}, \quad – \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}
\end{align}
となります。これで\(u\)が決まったので、例題のときと同様にどちらかの\(u\)を③と④式に代入すれば(ここでは一つ目の\(u\)を代入した)、
\begin{align}
〇 = \frac{b}{2} + \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}\\
□ = \frac{b}{2} – \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}
\end{align}
となります。したがって、二次方程式の解\(x\)は、
\begin{align}
x &= -\frac{b}{2} – \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}, \quad -\frac{b}{2} + \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}
\end{align}
です。2つをまとめて表現すれば、
\begin{align}
x = -\frac{b}{2} \pm \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}
\end{align}
となります。これで、\(b\)と\(c\)が決まれば、解\(x\)が求まることがわかりました。
実は解の公式と一緒?!
さて、もう少し詳しく見ていきましょう。
上で導いた解\(x\)を、少しだけ変形しておきます↓
\begin{align}
x &= -\frac{b}{2} \pm \sqrt{\frac{b^2}{4} – c}\\
&= \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4c}}{2} \quad \cdots \quad (\text{A})
\end{align}
この形を覚えておいてください。
ところで、もう一度解の公式に戻ります↓
$$x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4ac}}{2a}$$
これは、二次方程式(\(ax^2+bx+c\))のための公式でした。
一方、ここまで考えてきた二次方程式の形は、\(x^2+bx+c\)のように\(a\)が無い形です。
ただし、「\(a\)が無い」という表現は正確ではなく、正しくは「\(a=1\)のときの形」となります。
なので、上で示した解の公式を二次方程式(\(x^2+bx+c\))用の形にするためには、\(a=1\)を代入すればいいので、
$$x = \frac{-b \pm \sqrt{b^2 – 4c}}{2}$$
となります。
この式と、式(A)を比較してみてください…まったく同じ形をしていますね。
このように、やっぱりどんな解き方をしても、一般形は解の公式にたどりつくのです。
同じ二次方程式ならば、どういう方法で解こうが答えは同じになるので、当たり前のことなのですが…
\(ax^2+bx+c\)の形は解けないの?
ここまで読んでくれた読者の中には、
「新しい解き方では、\(ax^2+bx+c\)の形は解けないの?」
と思った方もいるのではないでしょうか?
答えは、「解ける」です。
解くためには、初めに少しだけ式を変形するだけです。例えば、以下のような問題があったとしましょう。
次の二次方程式を解け。
$$3x^2 + 9x + 3 = 0$$
\(x^2\)の前の係数があるパターンです。
こような場合は、初めに\(x^2\)の前の係数を( )の外にくくり出してしまいましょう。すると、
$$3(x^2 + 3x + 1) = 0$$
となりますね。これは両辺を\(3\)で割って、最終的に、
$$x^2 + 3x + 1 = 0$$
となります。ここまで変形できたら、新しい解き方が使えますね。
このように、
\(ax^2+bx+c = 0\)
の形は、まず両辺を\(a\)で割って、\(x^2\)の前の係数を無くしてやればいいんです!
これで、新しい二次方程式の解き方の紹介は終わります。楽しんでもらえましたか?
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因数分解も同じ解法で解ける
上の例題は二次関数を解く問題でしたが、因数分解も同じ手順で解くことができることに気づいたと思います。
例題として、以下の問題を考えてみましょう。
次の式を因数分解せよ。
$$x^2 + 5x + 3$$
ちなみに、因数分解とはどんなものだったかを忘れた人は、以下の記事でわかりやすく解説していますので参考にしてください↓
では、やっていきましょう。途中まで全く同じように進んでいきますので、くどいと思う人はサラッと読み流してください。
まず、例題の式を、
$$(x + \text{〇})(x + \text{□}) \quad \cdots \quad \text{(B)}$$
の形に変形することを考えます。これがまさに因数分解をするということですね。
〇と□は、以下の2式を満たすように決まるのでした。
- \(〇 + □ = 5\) … ①
- \(〇 × □ = 3\) … ②
〇と□は、
\begin{align}
〇 &= \frac{5}{2} + u \cdots ③\\
□ &= \frac{5}{2} – u \cdots ④
\end{align}
としておけば、①式を必ず満たすことができました。※〇+□をしたときに\(u\)が打ち消し合って消えてくれるからでした
続いて、②式に\(u\)を使って表現した〇と□を代入して、
\begin{align}
〇 \times □ &= 3\\
\left(\frac{5}{2} + u\right) \times \left(\frac{5}{2} – u\right) &= 3
\end{align}
これを\(u\)について解くと、
\begin{align}
\left(\frac{5}{2} + u\right) \times \left(\frac{5}{2} – u\right) &= 3\\
\frac{5^2}{4} – u^2 &= 3\\
u^2 &= \frac{25}{4} – 3\\
u &= \pm \sqrt{\frac{13}{4}}\\
u &= + \sqrt{\frac{13}{4}}, \quad – \sqrt{\frac{13}{4}}
\end{align}
となります。これで\(u\)が決まったので、例題のときと同様にどちらかの\(u\)を③と④式に代入すれば(ここでは一つ目のプラスの\(u\)を代入した)、
\begin{align}
〇 &= \frac{5}{2} + \sqrt{\frac{13}{4}} = \frac{5 + \sqrt{13}}{2}\\
□ &= \frac{5}{2} – \sqrt{\frac{13}{4}} = \frac{5 – \sqrt{13}}{2}
\end{align}
となります。
最後に、式(B)に〇と□を代入すれば、因数分解の完成です↓
$$\left(x + \frac{5 + \sqrt{13}}{2}\right)\left(x + \frac{5 – \sqrt{13}}{2}\right)$$
このように、新しい解き方は因数分解にも使える方法なのです。
天才数学者「ポー・シェン・ロー」
最後に、この解き方を考案した数学者「ポー・シェン・ロー」について紹介して終わりたいと思います。
この新しい解き方を考案した数学者の名前は、「ポー・シェン・ロー(英語表記:Po-Shen Loh)」。アメリカのカーネギーメロン大学に勤める数学の准教授です(2020年2月現在)。
引用先:Po-Shen Lohオリジナルサイト(https://www.poshenloh.com/about/)
現在、アメリカの国際数学オリンピックチームのナショナルコーチであり、彼の指導のもと2015年に1994年以来の勝利をアメリカにもたらしました。その後も2016年、2018年および2019年の大会で優勝しています。
そして、彼自身も、1999年に参加者として銀メダルを獲得した経験を持っています。
彼の対象とする数学フィールドは広く、2018年にアメリカ大統領早期キャリア賞を受賞しています。
彼は研究だけでなく、教育面も重視している人物であり、
「高度な概念をあらゆるレベルの人に教える」
ことがモットーとしています。
いまの日本では数学もほとんど暗記科目と同様の内容になっており、数学は学校の授業の中だけの存在になってしまっています。
彼は、もっと数学を身近に感じてもらい、複雑な公式を覚えるのではなく、できる限り単純で直観的に理解できる数学の教育を目指しています。
今回の新しい二次方程式の解き方は、「世界中の人にできるだけ共有したい」とコメントしています。
もっと詳しく知りたい人は、以下のサイトをご覧ください。ポー・シェン・ロー氏のオリジナルサイトです。
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まとめ
ここでは、天才数学者ポー・シェン・ロー氏が考案した二次方程式および因数分解を解くための、新しい解法を紹介しました。
解の公式を使わずに解けて、なおかつ比較的簡単であることに特徴があります。
実践向きかどうかの判断はお任せしますが、考え方は面白いですね。
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