なぜ「aの0乗は1」なのか? – その納得の理由を紹介します

中学の数学の授業で、\(a\)の\(0\)乗は\(1\)だと教わります。
$$a^0 = 1$$
「なぜ?」「\(0\)じゃないの?」と思った経験はありませんか?
ここでは、なぜ「aの\(0\)乗は\(1\)なのか」に対して、その納得の理由をいくつか紹介します。
なぜ「aの0乗は1」なのか?
中学校の数学で、累乗(るいじょう)というものを習います。
以下のようなものですね。
$$3^5$$
\(3\)を5乗しています。
これは、\(3\)を5回掛けることを意味します。
ですので、\(3^5\)を計算すると、
$$3^5 = 3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3 = 243$$
となります。
つまり、\(a\)の\(m\)乗、
$$a^m$$
は\(a\)を\(m\)回掛けたものと言えそうです。
では、\(m\)に\(0\)が入った
$$2^0$$
はどうでしょうか?
中学校では、
どんな数でも\(0\)乗すると、\(1\)である
と教わりませんでしたか?
ですので、\(2\)の0乗も\(1\)となります。
$$2^0 = 1$$
\(2\)の0乗ということは「\(2\)を0回掛けたもの」ということです。
「0回掛ける」ということは「何も掛けない」こととも解釈できます。
なぜそれが\(1\)になるのでしょうか?
\(2^0=0\)となってくれた方がまだ納得できる気もしますよね。
さて、ここでは0乗が\(1\)になる理由について、最後には必ず納得してもらえる説明をいくつか紹介します。
みなさんはどの説明が一番好きですか?
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規則性から0乗が1であることを知る
\(2\)の累乗を\(5\)から\(1\)まで徐々に減らしていった計算を考えましょう。
以下のようになります。
\begin{align}
2^5 & = 2 \times 2 \times 2 \times 2 \times 2 = 32 \\
2^4 & = 2 \times 2 \times 2 \times 2 = 16 \\
2^3 & = 2 \times 2 \times 2 = 8 \\
2^2 & = 2 \times 2 = 4 \\
2^1 & = 2 = 2
\end{align}
ここで、一番上の\(32\)を一つ下の\(16\)にするには、どんな数で割ればよいでしょうか?
当たりまえですが、\(2\)で割ればよいですね。
$$32 \div 2 = 16$$
さらに、\(16\)をその下の\(8\)にするにはまた\(2\)で割ります。
さらにさらに、\(8\)を\(4\)にするには\(2\)で割ります。
…
というように、累乗の数を減らしていくと、その一つ下の数は\(2\)で割った数になります。
このような規則性があることが分かりました。※累乗の性質を考えると当然のことではありますが…
では、\(2\)の\(0\)乗を考えてみましょう。
\begin{align}
2^5 & = 2 \times 2 \times 2 \times 2 \times 2 = 32 \\
2^4 & = 2 \times 2 \times 2 \times 2 = 16 \\
2^3 & = 2 \times 2 \times 2 = 8 \\
2^2 & = 2 \times 2 = 4 \\
2^1 & = 2 = 2 \\
2^0 & = ?
\end{align}
上の図から一つ下の値は\(2\)で割った数になるのですから、\(2^0\)の値は一つ上の\(2\)を\(2\)で割った値になるはずですね。
$$2^0 = 2 \div 2 = 1$$
すなわち\(2^0= 1\)が導けました。
これが累乗の規則性を利用した\(0\)乗が\(1\)になる説明です。
ここでは\(2\)の累乗を例に説明しましたが、もちろん、他の数字であってもまったく同じ説明で\(a^0=1\)が導けます。
階乗の定義を考え直してみる
今度は階乗の定義を考え直してみることで\(0\)の階乗を考えてみましょう。
この記事の初めにも述べたように、
\(a\)の\(m\)乗とは、\(a\)を\(m\)回掛けたもの
と定義すると考えてきました。
しかし、この定義だと\(2^0\)のときに、
「\(2\)を\(0\)回掛ける?……どゆこと??右辺に何もないじゃん!」
となります。
そこで、この定義を次のように変更してみましょう。
\(a\)の\(m\)乗とは、\(1\)に\(a\)を\(m\)回掛けたもの
「\(1\)に」という部分を付け足しました。
これによって、例えば\(2^3\)であれば、
$$2^3 = 1 \times 2 \times 2 \times 2$$
となります。
右辺の初めの\(1\)に注目です。
もちろん、\(1\)を掛けているだけなので、計算結果は変わりません。
では、\(2\)の\(0\)乗を考えましょう。
新しい定義にしたがえば、「\(2\)の\(0\)とは、\(1\)に\(2\)を\(0\)回掛けたもの」です。
よって、
$$2^0 = 1$$
となります。
右辺にはもともと\(1\)があるため、前の定義のように「右辺には何もない」ということにならないですね。
これが、階乗の新しい定義を考えることで\(a^0=1\)を理解する方法です。
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折り紙から\(0\)乗を知る
今度は、視覚的に\(0\)乗が\(1\)であることを確認してみましょう。
ここに、一枚の折り紙があるとします。
この折り紙を下の図のように半分に折ります。
もう一度、半分にしましょう。
これで折り紙を2回折りました。
では、この折り紙を広げると、下の図のように折り目がついているはずですね。
折り目によって、分割された領域の数を数えると4つです。
すなわち、2回折ると領域が4つになったということです。
これを数式で表すと、
$$2^2 = 4$$
となります。
このように折った回数と存在する領域の数は、次の式で表現できます。
$$2^{\text{折った回数}} = \text{領域の数}$$
この式は、何回折っても成立します。
気になる人は実際に紙を折ってみて確かめみてくださいね。
では、本題です。
折った回数が\(0\)回のとき、すなわち何も折らない状態での領域はいくつでしょうか?
何も折らない状態(最初の状態)では領域は一つですよね。
ということは、上の式で表現すると以下のようになります。
\begin{align}
2^{\text{折った回数}} & = \text{領域の数} \\
2^0 & = 1
\end{align}
これで\(0\)乗が\(1\)であることがわかりました。
視覚的に\(2^0=1\)であることを理解するための方法でした。
指数法則が成り立って欲しいから\(0\)乗は\(1\)にする
最後は、指数法則を使った方法です。
指数法則を覚えていますか?下のような公式ですね。中学校の数学で習います。
$$a^n \times a^m = a^{n+m}$$
具体的に数字を入れてみましょう。
\(a=3\)、\(n=4\)、\(m=5\)とします。すると、
$$3^4 \times 3^5 = 3^{4+5} = 3^{9}$$
です。
この式が成り立っているかどうかは、左辺のそれぞれの数を、
\begin{align}
3^4 & = 3 \times 3 \times 3 \times 3 \\
3^5 & = 3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3
\end{align}
として、上式に代入すると、
$$3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3 \times 3 = 3^9$$
となり、指数法則の公式が成り立っていることがわかります。
さて、では指数法則
$$a^n \times a^m = a^{n+m}$$
において、\(n=0\)のときを考えてみましょう。
以下のように書き換えれます。
$$a^0 \times a^m = a^m$$
この式の両辺を\(a^m\)で割り、ちょちょっと計算すると、
\begin{align}
a^0 \times a^m & = a^m \\
& = \frac{a^m}{a^m} \\
& = 1
\end{align}
よって、\(a^0=1\)が現れました。
指数法則を考える上でも\(0\)乗は\(1\)としていた方が都合がよいのですね。
ここまで紹介してきたように「\(0\)乗は\(1\)」と定義しておくことで、数学的に理解しやすく、扱いやすくなります。
注意して欲しいのは、あくまで\(a^0=1\)というのは定義であって、こうなるという証明などはできません。
「\(a^0=1\)としておけば、色々と都合が良さそうだ!」ということです。
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まとめ
- \(0\)乗が\(1\)と定義される理由をいくつか紹介しました。
- まずは、規則性を使った方法です。累乗の数を減らしていったとき、その計算結果は決まった数で割っていった数と一致します。これを使って\(0\)乗が\(1\)であることを知りました。
- 二つ目は「階乗の定義」自体を考え直しました。階乗の定義に「\(1 \times\)」が掛かっていると考えることで、自然に\(a^0=1\)が納得できます。
- 三つめは視覚的に理解する方法です。紙を折った回数とそのときにできる領域の数は\(2^\text{折った回数}=\text{領域の数}\)の関係があります。0回折った時の領域の数は\(1\)であるので\(2^0=1\)が成り立ちます。
- 最後は、指数法則を使った方法でした。指数法則の公式を成り立たせるには、\(0\)乗が\(1\)になった方が都合がよいのです。
ディスカッション
コメント一覧
なるほど!
me too!
やっとモヤモヤが解けた!
なーーーーーーーーーーるーーーーーーーーーほーーーーーどーーーーーーーー!!
なーーーーーーーーーるーーーーーーほーーーーーーーーーーーーどーーーー!!
わかりやすかった!
僕的には二個目の最初に1を掛ける説明が一番しっくりきたかな〜。
1を掛ける説明で階乗じゃなく累乗ですよね?
わかりやすくてよいのですが、一点だけ。
a^m を a×a×…×a×a として「m回掛ける」と表現していますが、「掛ける回数」を字面通り解釈すると「(m-1)回」になるんじゃないかと思います。「a×a。掛けたのは何回?」と訊けば、「2回」ではなく「1回」と答える人が多そうですよね。「a×a。掛け合わされたaは何個?」と訊けば「2個」となるでしょうけれど。
「0乗は0じゃないの?」というような疑問を持つ人に説明するときには、このような日常語との齟齬(ほんのわずかな齟齬ですが)を丁寧に扱うことは大事なんじゃないかと思いました。
じゃーお前説明分かりやすく言えんのか?anonよwwww
anonさんはあくまで個人的な意見であって説明できるかどうかはまた別の話だと思うのですが…
スペアリブみたいな頭の悪い絡み方するやつまさに厨房って感じ
レスバ始まってて草
中3です!
2でわっていく考え方と折り紙の考え方がすごく分かりやすかった!!
休校中なのでこのサイト助かります!!
ありがとうござります!!
けんかすんなやwwwww
わかりやすいーーー!!
とても分かり易かったです。
長年の疑問が解けて、スッキリしました。
指数法則より、aの0乗=aの1乗×aのー1乗
=a分のa
=1という方法があるのを見つけました。
スゴイスゴイ(棒読み)
折り紙のたとえが良かったです。
とてもわかりやすく、また面白かったです。
1にaをm回かけるのが納得いきました!なのに、なぜ普通だと「1に」というのがないのでしょうか?最初からそういう定義であるのだったら悩むこともなかったのにと考えてしまいます。また、最後のaの0乗を証明できるものはないと書いていましたが証明できないのになんで定義としてあるのか不思議に思います。都合がいいからあるというのでしたら、ちょっとおかしいと思います。定義としてあるなら証明できる何かが必要だと思うんです。勝手な都合でaの0乗を加えるのは如何なものかと思います。
とてもわかりやすかったです。
折り紙の例えが視覚的に分かり、一番納得できました。
-2^0 =-1 ですか? ※(-2)^0では、ありません。
魔界のりりむから調べに来たけど、結果的に後付け論法なのね。
じゃないとa0という累乗の定義が崩れるからね。
なんか数学に国語的な解釈が含まれている、すっきりはしたけど納得はいかないというか0乗いらなくね?
ってなったw
中3です。
すごくわかりやすく参考になりました。
兄に問題出されてて助かりました。
じゃあなぜ0の0乗は1?
2番目の説明通り、1に0を0回かければ、答えは1になります。
高1の私でもよく理解できました!
どれも分かりやすかったです!
ありがとうございます
ありがとうございました
大人だけど知りませんでした
ゲームで出てきて???ってなって来た
指数が0なのに答えが1であることを、3つ目の折り紙の方法で納得しました。有難う御座います。
The answer of the third origami was convinced that the answer was 1 though the index was 0. Thank you.
用第3个折纸的方法明白了指数是0答案是1。谢谢。
지 수 는 0 이 고 답 은 1 이라는 것 을 세 번 째 로 접 는 방법 으로 깨 달 았 다.감사합니다.
折り紙の考え方と指数法則の考え方がすごく分かりやすかったです
とても分かり易かったです。
昔グレーゾーンだったものが
スッキリしました、
本当にありがとうございます。
そしてあくまで個人的意見として、
コメント中にあった「aに(m-1)回掛ける」
の方が正直複雑で混乱します。
aのm乗=aをm回掛け合わせる説明の後、
1×が実は隠れてるんだよって流れなので、
例えば5の5乗は
1に5が5回掛けられてるんだなって
すんなり思い描けます
すいません訂正です。
文中にある「1×」は「1」です。
自分の方が余計な事書いてました笑
「階乗の定義」のところは「累乗」の定義ですよね?
いやー俺小学生だけどめっちゃ納得したわー!(折り紙のやつで)中学でこんな事ってすんのー?今小学4年生やからあと3年待てばいー!
俺今小6だけどめっちゃ不思議だったから謎が解けてよかった。あとわかりやすかった
なるほど~
ほどなる!
子供に聞かれて、困ってしまいましたが、なんとか納得出来ました!
ありがとうございます。
謎が解けてなるほど〜と思ったのですが
折り紙の項で?となりました
2回折ると2×2で4という領域は分かるのですが
なぜ折紙の最初のベースの数字が2なのか?
が分かりません。
ありがとうございます!
とある経緯で、高卒(勉強は中学まで…)45歳が研究職につき、論文を書くようになったものの、基礎学力が無く、通信制大学に入学し、数学の基礎の単位取得の中で、疑問に思ったことでした。
あくまで定義。納得です。
最初私自身は、aの0乗はaである。と思いました。面白かったです。
なるほど!色々な考え方を教えてくださり助かります。
子供にもこれで教えることができます。
凄い納得^_^
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