「偏差値とは」をわかりやすく説明 – 求め方も丁寧に紹介します!

「偏差値(へんさち)」とは何なのかについて、できる限りわかりやすく説明しています。
偏差値とは、一言で表現すると「実力を平等に測るための数値」です。よくテストでとった点数を偏差値に変換して使用されています。
しかし、なぜ点数をそのまま実力として扱うことはしないのでしょうか?
ここでは、偏差値の必要性から丁寧に説明します。
そして、後半には公式から、テストデータから偏差値を求め、偏差値の出し方をマスターしていきます。
偏差値とは
私が、「”偏差値(へんさち)とはなにか”を一言で言え!」と尋ねられると、
「実力を平等に測るための数値である」
と答えます。
何の実力かは、なんでもいいのですが、よく使われるのはテストの成績でしょう。
偏差値が30というと「もう少し勉強頑張らないとな」となりますし、偏差値が80というと「めっちゃ頭いいなぁ」となります。
偏差値が50だと、ちょうど平均ですね。
このように、皆さんは偏差値が高い方がいいことは何となく知っていると思います。
しかし、なぜテストの点数ではダメなのでしょうか?
テストの点数でも、上で行った会話は成り立ちますよね。
テストの点数が30点だったら「もっと頑張らないと」となり、点数が80点だったら「勉強できるねぇ」となります。
だったら、点数で会話しておけばよくて、わざわざ得体の知れない偏差値なんか使わなくていいんじゃないか!と思ってしまいます。
そんな偏差値ですが、使われるのにはやっぱり便利な理由があるからなのです。
ここでは、偏差値を正しく理解してもらい、「そんなに便利だったんだ!」と納得してもらえるようにわかりやすく説明していきます。
もう一度言いますが、偏差値は、「実力を平等に測るための数値」です。
偏差値=実力を平等に測るための数値
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偏差値をわかりやすく説明
点数はあてにならない?!
まずは、「わざわざ偏差値で会話しなくても、点数で会話すればいいんじゃないか?」という疑問に答えていきましょう。
以下の中学生(宮崎くん)とそのお母さんの会話を聞いてください。
宮崎くん:「この間の数学のテストは65点だったよ」
お母さん:「すごいじゃない!苦手な数学をよく頑張ったね。みんなはどれくらいだったの?」
宮崎くん:「学年の平均点は45点だったよ」
お母さん:「まぁ!欲しかったゲームを買ってあげましょう!!(嬉)」
宮崎くん、ゲームを買ってもらえてよかったです。
では、別の学校に通う中学生(藤井くん)の会話をもう一つ聞いてみましょう。
藤井くん:「この間の数学のテストは65点だったよ」
お母さん:「すごいじゃない!苦手な数学をよく頑張ったね。みんなはどれくらいだったの?」
藤井くん:「学年の平均点は75点だったよ」
お母さん:「……今日からゲームは禁止よ!携帯も没収ね!!(怒)」
藤井くん、かわいそうですね。携帯まで取らなくても…
宮崎家と藤井家の2つの家庭の会話を聞いてもらいました。
どちらの中学生もテストで65点をとったにもかかわらず、お母さんの反応が異なりました。
このように、テストで同じ点数をとったとしても、その人の実力はわかりません。それはなぜでしょうか?
それは、
周りの人がどれくらいの点数かによって自分の点数の評価が変わってくる
からですね。
少しだけ数学っぽい説明
もう少し、数学っぽい説明をしておきましょう。
宮崎くんの学年のテストを集計してグラフに分布を描くと、以下のようになるでしょう。
横軸にはテストの点数の範囲をとり、縦軸にはその範囲の点数を取った人数をとっています。
例えば、図の黄色い吹き出しに例を説明しているように、「30~40点とった人は15人いる」ということがわかります。
このようなグラフをヒストグラムと呼びます。これはこの後にも何度か登場するのできちんと意味を理解しておいてください。
このグラフを見ると、学年の平均点は45点になっており、65点の宮崎君はかなり上位の成績であることがわかります。
一方、藤井くんの学年のテストを集計してヒストグラムを描くと、以下のようになるでしょう。
同じように、横軸には点数の範囲をとり、縦軸にはその範囲の点数を取った人数をとっています。
学年の平均点は75点にであり、65点の藤井君の成績は平均より下ということになります。※携帯を没収されるほど悪いとは思いませんが…
このように、この分布の形が周りの人たちの成績を表しているのでが、この形がどうであるかによって、同じ点数でもその良し悪し(評価)が変わってくるのですね。
テストの点数で評価すると実際にこのような不都合が出てきます。
平均が一緒でも正確な評価は難しい?!
ここまでで、本人のテストの点数だけでは正確に実力の判断はできないことがわかりました。
本人のテストの点数だけではなく、周りの人がとった点数も一緒に考える必要があったのでしたね。
ここで、このように思った人もいるのではないでしょうか↓
「その人の点数と平均の点数の2つの点数を使って評価すれば、済むことじゃない?」
なかなかいいアイディアですね。
例えば、自分のテストの成績を伝えるとき、
「僕のテストの点数は75点で、学年の平均は45点だったよ」
と言えば、「よかったね」となりますし、
「僕のテストの点数は75点で、学年の平均は85年だった」
と言えば、「もう少し頑張らないとね」となります。
このように、自分の点数とまわりの平均点を伝えれば、正確に自分の実力を表現することができそうです。
しかし、残念ですがそうはならないのです。
例えば、
「僕のテストの点数は79点で、学年の平均は55点だったよ」
という場合のヒストグラムはどうなるでしょうか?
それは例えば、以下のように描けますね↓
上のグラフから、79点をとったとしたら自分より点数が良い人は3人だけしかいないので、かなり良い点数が取れたことがわかります。
しかし、「学年の平均は55点」という場合は上のヒストグラム以外にも色々な描き方があります。例えば、下のようなグラフも同じように学年の平均は55点です。
この場合の平均点は55点です。ですが同じ79点をとったとしても、自分より上の点数の人たちは16人います。
この場合よりも前の場合の方が、79点の実力は高そうですね。平均点も同じだとしても、学年の点数がどのように分布しているかによって評価が変わってきます。
この分布は、前の場合の分布に比べて、分布が広がっていますね。
分布の山がシャープ(鋭い)ほど、みんな同じような点数を取っているということであり、山がなだらかなほど、みんないろんな点数をとっているということです。
みんな同じような点数を取っている中で、一人だけ高い点数を取った方が実力があると言えますね。
よって、
「その人の点数と平均の点数の2つの点数を使えば正確に実力がわかる」
という考えは、必ずしも正しくないことがわかりました。
点数で判断すること問題点
ここまでをまとめておきましょう。
テストの点数だけで判断することの問題点は、
- 点数が同じでも平均点が違えば、その評価は違ってくる
- さらに、点数と平均点がどちらも同じだとしても、点数の分布具合で評価が違ってくる
これらの問題点を解決するのが、「偏差値」というわけです。
実力の判断に必要な要素
さて、ここまでで自分の点数だけでは、テストの実力を正確に判断できないことがわかりました。
では、何が分かればよいのでしょうか?
まずは、点数の平均値は必須だということはわかりますね。
「自分の点数が平均よりも高いのか低いのか、そして高いのであればどれくらい高いのか」を知る必要があります。
しかし、これだけではダメです。前の章で述べたように、周りの点数の分布も考えなければいけません。
それには、分布の広がり具合が関係していましたね。
この分布の広がり具合のことを、正式な数学の専門語では、「バラつき」と言います。
分布の山が鋭いと「バラつきが小さい」、分布の山がなだらかであれば「バラつきは大きい」と言います。
「バラつきが大きいときに平均より高い点数をとることは、バラつきが小さいときに同じ点数をとることよりも、評価は高くするべきである」ということを思い出しておいてください↓
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偏差値のを求める式
さあ、これで偏差値を計算するために必要な要素は揃いました。要素は2つです↓
- 平均点
- バラつき
これらから、偏差値を求めるには、以下の式を使います。
$$\text{偏差値} = \frac{\text{[自分の点数]} – \text{[平均点]}}{\text{[バラつき]}} \times 10 + 50$$
この式について考察してみましょう。
平均値と同じ点数をとったときの偏差値
まず、自分の点数が平均値と同じである場合はどうでしょうか?
すると、分数の分子の部分(\(\text{[自分の点数]} – \text{[平均]}\))が\(0\)となりますね↓
$$\text{[自分の点数]} – \text{[平均]} = 0$$
よって、偏差値は、
\begin{align}
\text{偏差値} &= \frac{\text{[自分の点数]} – \text{[平均]}}{\text{[バラつき]}} \times 10 + 50 \\
&= \frac{0}{\text{[バラつき具合]}} \times 10 + 50 \\
&= 50
\end{align}
となります。偏差値は\(50\)ですね。これはちょうど真ん中の実力だということです。
自分の点数が平均点と同じだったのですから当然ですね。
平均値より良い点数をとったときの偏差値
次に、自分の点数が平均点より良い場合はどうでしょうか?
例えば、
- \(\text{自分の点数} = 80点\)
- \(\text{平均点} = 60点\)
- \(\text{バラつき} = 10\) ※バラつきの数値化は後で説明します。
とします。※ここではバラつきは適当に\(10\)と置くことにしました。バラつきの値に関しては後からきちんと説明します。
この場合、偏差値の式は、
\begin{align}
\text{偏差値} &= \frac{\text{[自分の点数]} – \text{[平均]}}{\text{[バラつき]}} \times 10 + 50 \\
&= \frac{80 – 60}{10} \times 10 + 50 \\
&= 2 \times 10 + 50 \\
&= 70
\end{align}
となり偏差値は\(70\)となります。平均値より高い点をとれば、偏差値は50より大きくなることがわかりました。
反対に平均値より低い点をとれば、偏差値は50より小さくなることもわかるでしょう。確認したい人はやってみてください。
バラつきが大きいときと小さいときの偏差値の変化
最後にバラつきについてです。
同じ点数、同じ平均値の場合に、バラつきが大きいときとバラつきが小さいときで、偏差値にどのような変化が生じるかを確認していきましょう。
先ほどはバラつきが\(10\)として計算しました。そのときの偏差値は\(70\)でしたね。
では、次はバラつきだけ\(20\)として、条件で計算してみます。
- \(\text{自分の点数} = 80点\)
- \(\text{平均点} = 60点\)
- \(\text{バラつき} = 20\)
偏差値の式は、
\begin{align}
\text{偏差値} &= \frac{\text{[自分の点数]} – \text{[平均]}}{\text{[バラつき]}} \times 10 + 50 \\
&= \frac{80 – 60}{20} \times 10 + 50 \\
&= 1 \times 10 + 50 \\
&= 60
\end{align}
となり偏差値は\(60\)となります。
バラつきが大きくなると、同じ点数をとっても偏差値は小さくなります。
前に、
「バラつきが大きいときに平均より高い点数をとることは、バラつきが小さいときに同じ点数をとることよりも、評価は高くするべきである」
ということを確認しました。偏差値はきちんとそのことを表現できていることがわかります。
では、次章で実際のテストの点数データに対して偏差値を出してみましょう。
そこで、まだ説明していなかった”バラつきの数値化”についても解説します。
偏差値の求め方
ここからは、実際に偏差値を求めるため、具体的な数値を使って説明していきます。
次の表のような7人の数学の点数があります。
名前 | シノハラ | ヤマザキ | サカイ | ハマダ | ウエタニ | テツ | ワタナベ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 78 | 65 | 88 | 80 | 91 | 88 | 56 |
ここでは、一番成績のいいウエタニくんの点数(\(91\)点)と、一番成績の悪いワタナベくんの点数(\(56\)点)について偏差値を求めてみましょう。
再度確認ですが、偏差値の式は以下で表現できましたね。
$$\text{偏差値} = \frac{\text{[取った点数]} – \text{[平均点]}}{\text{[バラつき]}} \times 10 + 50$$
平均値を求める
まずは、平均点を求めます。
これは何も難しいことはないですね。全部の点数を足して、人数で割るだけです。
次のような式になります。
\begin{align}
\text{平均点} &= \frac{78 + 65 + 88 + 80 + 91 + 88 + 56}{7} \\
&= 78
\end{align}
ということで、平均点は\(78\)点です。
バラつきを求める
次に、バラつきです。
標準偏差について
偏差値のを求めるには、みんなの点数がどのくらいバラついているかを数値で表現する必要があります。
それを表すのに用いられるのが、「標準偏差(ひょうじゅんへんさ)」と呼ばれるものです。
標準偏差 = バラつき具合を数値で表現したもの
なので、正式な偏差値の公式は、
$$\text{偏差値} = \frac{\text{[取った点数]} – \text{[平均点]}}{\text{[標準偏差]}} \times 10 + 50$$
ということになります。※いままで「バラつき」と表現していたところを、「標準偏差」に変えただけです。
名前は難しそうですが、実際の計算はそれほどではありません。
まず、以下の図を見てください。
7人のバラつき具合を視覚化したものです。左側に名前を書いており、その人の点数が平均値からどれくらい外れているかを示しています。
ここから、標準偏差を求めるには、まずはそれぞれの点数に対して、平均値からの差を求めます。
$$\text{平均からの差} = \text{ある人の点数} – \text{平均点}$$
【7人それぞれの平均からの差↓】
\begin{align}
\text{シノハラ:} 78 – 78 &= 0\\
\text{ヤマザキ:} 65 – 78 &= -13\\
\text{サカイ:} 88 – 78 &= +10\\
\text{ハマダ:} 80 – 78 &= +2\\
\text{ウエタニ:} 91 – 78 &= +13\\
\text{テツ:} 88 – 78 &= +10\\
\text{ワタナベ:} 56 – 78 &= -22
\end{align}
この差が平均値からのズレを表しており、どれくらい各データがバラついているかを表現していることになります。
次に、これらを\(2\)乗します。その理由は、負の値を消すためです。
なぜ負の値を消すのかというと、データの値のズレ(バラつき)を考える上で、値が負だろうが正だろうがそんなことは関係がないからです。
上の例でいうと、
- ヤマザキくんは平均値より13だけ小さい(\(-13\))
- ウエタニくんは平均値より13だけ大きい(\(+13\))
ですが、これは「ズレ(バラつき)具合という視点からは同じである」と判断します。
なので、全ての値を\(2\)乗してマイナスをとってしまいます(どんな自然数も\(2\)乗をすると必ず正の値になるのでしたね)↓
【7人それぞれの平均からの差の\(2\)乗↓】
\begin{align}
\text{シノハラ:} (78 – 78)^2 &= (+0)^2 = 0\\
\text{ヤマザキ:} (65 – 78)^2 &= (-13)^2 = 169\\
\text{サカイ:} (88 – 78)^2 &= (+10)^2 = 100\\
\text{ハマダ:} (80 – 78)^2 &= (+2)^2 = 4\\
\text{ウエタニ:} (91 – 78)^2 &= (+13)^2 = 169\\
\text{テツ:} (88 – 78)^2 &= (+10)^2 = 100\\
\text{ワタナベ:} (56 – 78)^2 &= (-22)^2 = 484
\end{align}
※なぜ、マイナスをとるだけではダメなのかが気になった人もいるかもしれません。それは数学の計算上の都合があるのですが、ここでは詳しく述べません。
そして、次は\(2\)乗した数を全部足して、人数で割ります。つまり、平均を求めます。
$$\frac{0+169+100+4+169+100+484}{7}=146.5714$$
この値は分散(ぶんさん)と呼ばれる値であり、いま最終的に求めようとしている標準偏差と同様に、これもデータのバラつきを表現する値の一つです。
分散の平方根をとると、標準偏差になります。
なぜ、分散ではなく標準偏差を用いるかというと、分散は\(2\)乗をした値の平均でしたね。\(2\)乗した値をそのままか使うと単位が変わったままになってしまうからです。
例えば、今は点数を扱っていますが、長さ(単位は\(m\))に対してのバラつきを同様の方法で考えたとします。
負の値を消すため、\(2乗\)をした値というのは単位は\(m^2\)であり、面積の単位ですね。
いま、欲しいのは長さ(単位は\(m\))のバラつきなのですから、単位を元に戻すために平方根をとっているわけです。
※この辺りの細かい説明は少し難しいので、余裕があれば知っておくぐらいでいいと思います。
分散の平方根をとって、
$$\text{標準偏差}=\sqrt{\text{分散}}=\sqrt{146.5714}=12.1$$
となります。これで標準偏差がでました!
偏差値を求める
では、偏差値の公式に求めた平均値と標準偏差を代入してみましょう。
\begin{align}
\text{偏差値} &= \frac{\text{[取った点数]} – \text{[平均点]}}{\text{[バラつき]}} \times 10 + 50\\
&= \frac{\text{[取った点数]} – 78}{12.1} \times 10 + 50
\end{align}
この式でウエタニくんとワタナベくんの偏差を求めると以下のようになります。
ウエタニくんの偏差値
\begin{align}
\text{偏差値} &= \frac{\text{[ウエタニくんの点数]} – 78}{12.1} \times 10 + 50\\
&= \frac{91 – 78}{12.1} \times 10 + 50\\
& = 60.74
\end{align}
ウエタニくんの偏差値は\(60.74\)となりました。なかなかの偏差値ですね。
ワタナベくんの偏差値
続いてワタナベくんの偏差値です。
\begin{align}
\text{偏差値} &= \frac{\text{[ワタナベくんの点数]} – 78}{12.1} \times 10 + 50\\
&= \frac{56 – 78}{12.1} \times 10 + 50\\
& = 31.18
\end{align}
ワタナベくんの偏差値は\(31.18\)となりました。……もうちょっと勉強しましょう。
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まとめ
盛りだくさんの内容だったと思います。最後に重要ポイントを復習して終わりましょう。
偏差値とは、
「実力を平等に測るための数値」
でした。
テストの点数や学年の平均点だけだと、実力を正確に評価することができないため、標準偏差という数値が使用されます。
偏差値を求めるには、
- 平均点
- 標準偏差
の二つの情報が必要ででした。
これらを以下の公式に代入するれば、偏差値が計算できます。
$$\text{偏差値} = \frac{\text{[取った点数]} – \text{[平均点]}}{\text{[標準偏差]}} \times 10 + 50$$
ディスカッション
コメント一覧
「僕の点数は75点で、平均は85年だったよ」というところ、85年ではなく85点だと思います。
もう7ヶ月経ちました。
修正を早くお願いいたします。
とても分かりやすかったです。
参考になりました。
ありがとうございます!