メルセンヌ数と完全数の関係 – 成り立つ関係の証明を分かりやすく説明

ここでは、”メルセンヌ数、メルセンヌ素数および完全数とは何か”ということから説明し、最終的にはメルセンヌ素数と完全数の間に成り立つ関係を証明していきます。
証明では、途中の導出の式まで丁寧に解説しています。
読者の皆さんに、この証明の美しさが伝われば幸いです。
メルセンヌ数とメルセンヌ素数
まず、”メルセンヌ数”と”メルセンヌ素数”とは何かについて説明します。もう知っているという人は飛ばしてください。
下の画像は、メルセンヌ数と発見したフランスの数学者マラン・メルセンヌです。
メルセンヌ数
”メルセンヌ数”とは、
$$2^n – 1$$
で表せる数のことです。ここで、\(n\)は自然数(\(n=1, 2, 3\cdots\))です。
例えば、\(n=4\)を代入すると、
$$2^4 – 1 = 15$$
です。
よって、\(15\)はメルセンス数ということになります。
\(n=1\sim9\)までのメルセンヌ数を書いておきましょう。
\(n\) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
\(n^2-1\) | 1 | 3 | 7 | 15 | 31 | 63 | 127 | 255 | 511 |
メルセンヌ素数
次にメルセンヌ素数です。
メルセンヌ数の中でも、素数である場合にその数を”メルセンヌ素数”と言います。
例えば、\(n=2\)のときは、
$$2^2-1 = 3$$
となります。\(3\)は素数ですのでこれはメルセンヌ素数ということになります。
以下の表はメルセンヌ数の中でメルセンヌ素数のものを赤文字で示しています。
\(n\) | \(2^n-1\) |
---|---|
2 | 3 |
3 | 7 |
4 | 15 |
5 | 31 |
6 | 63 |
7 | 127 |
8 | 255 |
9 | 511 |
10 | 1023 |
11 | 2047 |
12 | 4095 |
13 | 8191 |
となります。
ここで、注目したいのは、\(2^n-1\)が素数の場合は、\(n\)も必ず素数だということです。
ただし、逆は成り立ちません。\(n\)が素数だからといって\(2^n-1\)も素数だとは限りません。
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完全数とは
完全数とは、自分自身の約数(ただし、自分自身は除く)をすべて足した数が自分自身に等しくなる数
です。
例えば、\(6\)は完全数です。\(6\)の約数は、
$$6の約数 \rightarrow 1, 2, 3, 6$$
の四つですが、この中から自分自身である\(6\)以外の数をすべて足すと、
$$1+2+3=6$$
となり、自分自身\(6\)になりました。これが完全数です。
その他の完全数も紹介しましょう。
- \(28=1+2+4+7+14\)
- \(496=1+2+4+8+16+31+62+124+248\)
- \(8128=1+2+4+8+16+32+64+127+254+508+1016+2032+4064\)
完全数にはいろいろな数があります。
ただし、そんなに多くの完全数は発見されていません。10000以下の完全数はここで紹介した\(6, 28, 496, 8128\)の四つだけです。
完全数は珍しい数字なのですね。
完全数とメルセンヌ素数の関係の証明
ここで、完全数とメルセンヌ素数の関係を紹介しましょう。
メルセンヌ数(\(2^N-1\))が素数(つまり、メルセンヌ素数)であるとき、
$$n=2^{N-1} (2^N-1)$$
は完全数となる。
このような関係が成り立ちます。
確認してみましょう。
\(N=3\)のときを考えてみます。
このとき、\(2^3-1\)は、
$$2^3-1 = 7$$
であり、\(2^N-1\)はメルセンヌ素数ですね。
このとき、\(2^{N-1} (2^N-1)\)は、
$$2^{3-1} (2^3-1) = 28$$
です。上記で述べたように、
$$28(=1+2+4+7+14)$$
なので完全数になっているようですね。
上の関係は、ちゃんと成り立っているようですね。
証明
証明してみましょう。できるだけ丁寧に進めていきます。
まず、\(n=2^{N-1} (2^N-1)\)の、
$$2^{N-1}$$
の部分の約数の和を考えましょう。
例えば、\(N=3\)のとき、$$2^{N-1}$$は、
$$2^{3-1}=2^2$$
なので、\(2^3-1\)の約数は、
$$2^{3-1}\text{の約数} = 2^2\text{の約数} = 1, 2, 2^2$$
です。したがって、\(N=3\)のとき\(2^{N-1}\)の約数の和は、
$$1+2+2^2$$
となります。
同じように\(N=4, 5, 6\)の時の$$2^{N-1}$$の約数の和は、
- \((N=4\text{のとき})\text{:約数の和}=1+2+2^2+2^3\)
- \((N=5\text{のとき})\text{:約数の和}=1+2+2^2+2^3+2^4\)
- \((N=6\text{のとき})\text{:約数の和}=1+2+2^2+2^3+2^4+2^5\)
です。
したがって、\(2^{N-1}\)の約数の和は、
$$S(2^{N-1})=1+2+2^2+2^3+\cdots+2^{N-1}$$
と表せます。
ここで、\(S(2^{N-1})\)は、( )の中の関数の約数の総和という意味です。
次に、\(2^N-1\)の約数の和\(S(2^N-1)\)を考えます。
いま、\(2^N-1\)は素数であるという条件が付いています。
素数は、\(1\)と自分自身(\(2^N-1\))でしか割ることができないので、\(2^N-1\)の約数は、
$$2^N-1\text{の約数}=1, 2^N-1$$
です。したがって、約数の和(\(S(2^N-1)\))は、
$$S(2^N-1) = 1 + 2^N – 1 = 2^N$$
です。
そして、\(n=2^{N-1} (2^N-1)\)の約数の和(\(S(n)\))は、上で見てきたそれぞれの約数の和を使って、
$$S(n) = S(2^{N-1}) S(2^N-1) = (1+2+2^2+2^3+\cdots+2^{N-1}) 2^N$$
と表すことができます。
なぜ、このような積で表すことができるのでしょうか?
具体的に、\(N\)が\(2\)、\(3\)のときを考えてみましょう。
まずは、\(N=2\)のときはどうでしょうか?
\(S(2^{N-1})\)と\(S(2^N-1)\)、そして\(S(n)\)はそれぞれ、
\begin{align}
S(2^{N-1}) &= S(2^{2-1}) = S(2) = 1+2 \\
S(2^N-1) &= S(2^2-1) = S(3) = 1+3 \\
S(n) &= S(2^{2-1} (2^2-1)) = S(6) = 1+2+3+6
\end{align}
です。
はじめの二式を使って、\(S(2)S(3)\)をすると、
$$S(2)S(3) = (1+2)(1+3) = 1+2+3+6$$
となります。※たすき掛けを使いました。
これは、\(S(6)\)と一致していますね。
そして、\(N=3\)についても同様に、
\begin{align}
S(2^{N-1}) &= S(2^{3-1}) = S(4) = 1+2+4 \\
S(2^N-1) &= S(2^3-1) = S(7) = 1+7 \\
S(n) &= S(2^{3-1} (2^3-1)) = S(28) = 1+2+4+7+28
\end{align}
となり、
$$S(4)S(7) = (1+2+4)(1+7) = 1+2+4+7+28 = S(28)$$
となります。
したがって、
$$S(2^{N-1} (2^N-1)) = S(2^{N-1}) S(2^N-1)$$
が成り立つことが分かりました。
さて、
$$S(n) = S(2^{N-1}) S(2^N-1) = (1+2+2^2+2^3+\cdots+2^{N-1}) 2^N$$
に戻りましょう。この式の、
$$(1+2+2^2+2^3+\cdots+2^{N-1})$$
の部分は等比級数の公式、
初項\(a\)、公比\(r\)、項数\(m\)の公比数列の和は、
$$a + ar + ar^2 + \cdots + ar^{m-1} = \frac{a(1-r^m)}{1-r}$$
と表せる。ただし、\(r\neq1\)。
を使って、
$$(1+2+2^2+2^3+\cdots+2^{N-1}) = \frac{1-2^{N}}{1-2} = 2^{N} – 1$$
となります。ここで、初項\(a=1\)、公比\(r=2\)、項数\(m=N\)としています。
これより、
$$S(n) = (1+2+2^2+2^3+\cdots+2^{N}) 2^N = (2^{N} – 1) 2^N$$
となり、
$$(2^{N} – 1) 2^N = (2^{N} – 1) 2^{N-1} 2$$
ですので、\(n=2^{N-1} (2^N-1)\)を使って表すと、
$$(2^{N} – 1) 2^N = (2^{N} – 1) 2^{N-1} 2 = 2n$$
となります。
これで、\(2^{N-1} (2^N-1)\)の約数の総和\(S(n)\)は、
$$S(n)=2n$$
となることが分かりました。
最後に、\(S(n)\)はすべての約数の総和ですが、完全数の約数は自分自身は和に含めませんので、完全数の約数の和は、
$$\text{完全数の約数の和} = S(n) – 2^{N-1} (2^N-1) = S(n) – n$$
となります。
よって前の式から、
$$\text{完全数の約数の和} = S(n) – n = 2n – n =n$$
となり、\(n\)が完全数であることが証明できました。
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まとめ
- メルセンヌ数=\(2^N-1\)
- メルセンヌ素数は、メルセンヌ数の中で素数である数
- 完全数とは、自分自身以外の約数を足すと自分自身の数になる数
- メルセンヌ素数と完全数には美しい関係がある
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