素数に法則はあるのか? – 偉人たちが挑戦した素数の数式化

素数に法則はあるのでしょうか?
素数の研究の歴史は長く、歴史上の偉大な数学者たちが素数の法則を見つけることに挑戦してきました。
そんな彼らが見つけ出だそうとした素数の法則を紹介します。
素数に法則はあるのか?
”素数”は現れる順番に法則性がないと言われています。
法則性がないとは、整数を\(1\)から順番に数えていったとき、どのタイミングで素数が現れるかがまったく分からないということです。
”素数に法則がない”とは、”素数を数式化できない”ともいうことができます。
例えば、正の偶数を数式化したいとき、次のようにすればよいでしょう。
$$\text{偶数} = 2 n, \quad (n=1,2,\cdots)$$
この式を使えば、\(n\)に任意の値を入れることでどんなに大きな偶数であってもすぐに求めることができます。
これが数式化することのメリットです。
しかし、素数にはこのような数式が存在しません。
ですので、新しい素数を知りたいと思っても、すぐには知ることができないのです。
なので、新しい素数が見つかると、一大ニュースとして大きく取り扱われるのです。
それほど、素数は気まぐれで、神秘的な数なのです。素数の不思議な性質については、
も合わせてご覧ください。
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過去の偉人たちが挑戦した素数の数式化
素数は昔から神秘的な数とされ、多くの数学者たちが研究してきました。
その中で、素数の法則を見つけようとする試みも行われてきましたが、すべての素数をつくる式どころか、一部の素数だけを作る式すら見つかっていません。
ここでは、過去の偉大な数学者たちがどのような式で素数を表そうとしたのかを紹介します。
ピエール・ド・フェルマーの数式
フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1607年~1665)は、
$$2^{2^n} + 1, \quad (n=1,2,\cdots)$$
で表現できる数は素数であると予想しました。
※\(2^{2^n}\)の部分は、”\(2\)の\(2\)乗をさらに\(n\)乗する”のではなく、”\(2\)の\(n\)乗が\(2\)の右肩に乗っている”形ですので注意してください。
つまり、
$$2^{2^3}$$
であれば、先に\(2^3\)を先に計算し、最後に\(2^8\)を計算します。
$$2^{2^3} = 2^8 = 256$$
この数式の\(n\)に\(0, 1, 2, 3, 4\)を入れると確かに素数となります。
\begin{align}
2^{2^0} + 1 & = 3 \\
2^{2^1} + 1 & = 5 \\
2^{2^2} + 1 & = 17 \\
2^{2^3} + 1 & = 257 \\
2^{2^4} + 1 & = 65537
\end{align}
しかし、現在では、\(n=5\)以降は素数ではないことが分かっています。
\(n\) | \(2^{2^n}+1\) |
---|---|
\(0\) | \(2^1+1=3\),素数 |
\(1\) | \(2^2+1=5\),素数 |
\(2\) | \(2^4+1=17\),素数 |
\(3\) | \(2^8+1=257\),素数 |
\(4\) | \(2^{16}+1=65537\),素数 |
\(5\) | \(2^{32}+1=4294967297\),素数ではない |
\(6\) | \(2^{64}+1=\text{20桁の数}\),素数ではない |
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マラン・メルセンヌの数式
フランスのカトリック教会の修道士でフェルマーらと手紙のやりとりをしていたマラン・メルセンヌ(1588年~1648年)は、
$$2^n – 1$$
で計算される数が素数になるのは\(n=2,3,5,7,13,17,19,31,67,127,257\)のときであると予想しました。
\(n\)の値も素数になっていることに注目です。
\(2^n-1\)で計算される整数は”メルセンヌ数”と呼ばれ、素数であるメルセンヌ数は”メルセンヌ素数”と呼ばれます。
\(n\)が大きな場合、メルセンヌ数は、巨大な整数になるため、メルセンヌの予想が正しいのかどうかはすぐには分かりませんでした。
メルセンス数が登場してから約200年後、メルセンヌ数が素数であるかどうかを判定できる”リュカ・テスト”が1878年に発表されたことによって、メルセンヌの予想は正しくないことが明らかにされました。
\(n\)=素数 | \(2^n-1\) |
---|---|
2 | \(2^2-1=3\),素数 |
3 | \(2^3-1=7\),素数 |
5 | \(2^5-1=31\),素数 |
7 | \(2^7-1=127\),素数 |
11 | \(2^{11}-1=2047\),素数ではない |
13 | \(2^{13}-1=8191\),素数 |
17 | \(2^{17}-1=131071\),素数 |
19 | \(2^{19}-1=524287\),素数 |
31 | \(2^{31}-1=2147483647\),素数 |
61 | \(2^{61}-1=\text{19桁の数}\),素数 |
67 | \(2^{67}-1=\text{21桁の数}\),素数ではない |
89 | \(2^{89}-1=\text{27桁の数}\),素数 |
107 | \(2^{107}-1=\text{33桁の数}\),素数 |
127 | \(2^{127}-1=\text{39桁の数}\),素数 |
257 | \(2^{257}-1=\text{78桁の数}\),素数ではない |
レオンハルト・オイラーの数式
あの歴代数学者の中でナンバーワンの天才だったという呼び声も高いスイスのレオンハルト・オイラー(1707年~1783年)も”素数の数式化”に挑戦しています。
オイラーの考案した式は、
$$n^2 – n + 41, \quad (n=1,2,\cdots)$$
です。これ以外にも素数の式を考案しましたが、この式はその中の一つです。
オイラーの二次式が作る整数は、なんと\(n\)が\(1 \sim 40\)の時に、立て続けに素数となります。
\(n\) | \(n^2-n+41\) |
---|---|
1 | 1^2-1+41=41,素数 |
2 | 2^2-1+41=43,素数 |
3 | 3^2-1+41=47,素数 |
4 | 4^2-1+41=53,素数 |
5 | 5^2-1+41=61,素数 |
6 | 6^2-1+41=71,素数 |
7 | 7^2-1+41=83,素数 |
8 | 8^2-1+41=97,素数 |
9 | 9^2-1+41=113,素数 |
10 | 10^2-1+41=131,素数 |
11 | 11^2-1+41=151,素数 |
12 | 12^2-1+41=173,素数 |
13 | 13^2-1+41=197,素数 |
14 | 14^2-1+41=223,素数 |
15 | 15^2-1+41=251,素数 |
16 | 16^2-1+41=281,素数 |
17 | 17^2-1+41=313,素数 |
18 | 18^2-1+41=347,素数 |
19 | 19^2-1+41=383,素数 |
20 | 20^2-1+41=421,素数 |
21 | 21^2-1+41=461,素数 |
22 | 22^2-1+41=503,素数 |
23 | 23^2-1+41=547,素数 |
24 | 24^2-1+41=593,素数 |
25 | 25^2-1+41=641,素数 |
26 | 26^2-1+41=691,素数 |
27 | 27^2-1+41=743,素数 |
28 | 28^2-1+41=797,素数 |
29 | 29^2-1+41=853,素数 |
30 | 30^2-1+41=911,素数 |
31 | 31^2-1+41=971,素数 |
32 | 32^2-1+41=1033,素数 |
33 | 33^2-1+41=1097,素数 |
34 | 34^2-1+41=1163,素数 |
35 | 35^2-1+41=1231,素数 |
36 | 36^2-1+41=1301,素数 |
37 | 37^2-1+41=1373,素数 |
38 | 38^2-1+41=1447,素数 |
39 | 39^2-1+41=1523,素数 |
40 | 40^2-1+41=1601,素数 |
すごい精度で素数を表現していることが分かると思います。さすがはオイラーです。
しかし、オイラーの考案した式も、\(n=41\)を超えると、素数ではない整数が出てくるようになってしまいます。
\(n\) | \(n^2-n+41\) |
---|---|
41 | 41^2-1+41=1681,素数ではない |
42 | 42^2-1+41=1763,素数ではない |
43 | 43^2-1+41=1847,素数 |
44 | 44^2-1+41=1933,素数 |
45 | 45^2-1+41=2021,素数ではない |
現在では、”\(n^2-n+41\)”のような”多項式”では、素数だけを作る式は作れないことが証明されています。
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いま注目されている素数の法則を表す式
ここまで見てきたように、すべての素数を作る式や、一部の素数だけを作る式は、いまも作られていません。
素数を数式化することは不可能のような気がしてきますね。
しかし、メルセンヌ数を作る、
$$2^n-1$$
という式は、最大の素数を見つけるために使われているのです。
その理由は”リュカ・テスト”を1930年代に改良した”リュカ-レーマー・テスト”を使えば、メルセンヌ数が素数であるかどうかを判定できるからです。
1952年には、はじめてコンピュータを使って、157桁のメルセンヌ素数\((n=521)\)が発見されました。
1961年には、1281桁\((n=4253)\)と、1332桁\((n=4423)\)のメルセンヌ素数が、1人の人物によってほぼ同時に発見されました。
ところが、2つの素数を見つけた人物が、大きい方の1332桁の素数を先に印刷したため、小さい方の1281桁の素数は一度も最大の素数として脚光を浴びることはありませんでした。
”オリンピックの100m走で、銀メダリストもオリンピックレコードだったけど…”という感じでしょうか?
今後も素数の法則を探す研究は続けられるでしょう。
もしかすると、素数の数式化も夢ではなくなるかもしれません。
まとめ
- 素数が登場する順番に法則はない
- 歴史上の偉人達が素数の数式化に挑戦してきたが、未だに成功していない
- メルセンヌ数は今後の素数の発見に役立つと期待されている
- 今後の素数分野の研究に期待!
ディスカッション
コメント一覧
n番目の素数p(n)を表す、多項式ではなくて“式”なら、既に何個か見つかっています。
http://mathworld.wolfram.com/PrimeFormulas.html
計算してみるとちゃんとp(1)=2,p(2)=3,p(3)=5…となります。
ただ、全く実用的ではありません。
では式が見つかっているのならなぜ使わないのかというと、例えば5,000,000番目の素数を知りたいとき、これらの式は2^5,000,000回の総和、つまり(約150万桁の数)回分の総和計算を必要とするからです。現在知られている素数の次の数となると、さすがにスパコンを使っても十数年ほどはかかります。ですから、素数を全て表す“簡単な”式は見つかっていません。
そうなんですね!
すごく興味深い情報です。
時間があるときに、記事の情報を更新したいと思います。
ありがとうございます。
「エンペディア」というサイトで、
「素数」を検索すると、
「素数の生成式」が出てきます。
実用性はないらしいのですが、これが素数列にならないでしょうか。
n ^2-n+41が41を超えると素数ではなくなる理由は簡単です。分配法則を使ってn(n-1)+41と変換し、nに41を代入すると41×40+41=41^2となるので。
ゆいとさん。それは証明したことにはならない。誰にでも分かるように明らかにすることが証明だから。
アインシュタインも言ってますよね。「6歳の子供に説明できなければ、理解したとは言えない。」と。
思ったのですが,3の倍数➕2で,偶数じゃない数じゃないですか?
3n+2だとn=2だと
3n+2だとn=2を代入すると8になり偶数ですよ?
2が偶数なので無理です
3×11+2=35で素数じゃないでしゅ
3n+2にn=2だと8になり偶数ですよ。
むず!
6n+1 6n+5 としては如何
1(mod6) 5(mod6) 2,3,5 以外は 表現できます
0 6 12 18 24 30 36 42 48 54 60 66 72
1 7 13 19 25 31 37 43 49 55 61 67 73
2 8 14 20 26 32 38 44 50 56 62 68 74
3 9 15 21 27 33 39 45 51 57 63 69 75
4 10 16 22 28 34 40 46 52 58 64 70 76
5 11 17 23 29 35 41 47 53 59 65 71 77
これなら 素数はお行儀よく並びます
0 6 12 18 24 30 36 42 48 54 60 66 72 78
1 7 13 19 25 31 37 43 49 55 61 67 73 79
2 8 14 20 26 32 38 44 50 56 62 68 74 80
3 9 15 21 27 33 39 45 51 57 63 69 75 81
4 10 16 22 28 34 40 46 52 58 64 70 76 82
5 11 17 23 29 35 41 47 53 59 65 71 77 83
a(mod6)b 6の倍数に0から5を加えると ? a+6b
6✖±1では?
6×6一1は35で、7の倍数なので、違います
先に普通5っていいそうだったけどwwwwww
n^2-n+41の式で何で第二項目が全て1になっているのでしょうか…..
わけわからん。。。
素数の数式はまだ解明されるのに時間がかかる…。。。
素数は、整数を素因数分解したときに出てくる、いわば「自然数を作る基本」になるものだと考えられます。
例えば、70を素因数分解すると2×5×7で素数になります。
未だに素数を見つける数式などは無く、素因数分解でしか素数をあばき出すことしか出来ません。
素数を見つける数式ができると楽しみですね。
今の数学者たちに期待できます(#^.^#)
素数って深く考えてみると摩訶不思議なものなんだなぁって痛感させられました。
歴史が好きなのですが数学にも興味わいてきました!
KAT
100年後かわかりませんが、スーパーコンピュータがある程度の桁までは数式を作るでしょう。
ても、無限大にある素数の桁が増える度、研究は続き続き続けるのだと思います。
n ^2-n+41の式の第ニ項目が全て1になっています。修正お願いします。
表を使うと何桁でも素数だけでなく約数も即座に分かる。詳細はブログに書いてあるので奔りを紹介。偶数は2以外素数でないので省く。n進法で書くと末尾だけが問題となる。2を足していき末尾がその数以上になると繰り上がる。末尾が0となるとそれが約数。
3 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 2 1 0 ・・
5 0 2 4 1 3 0 2 4 1 3 0 2 4 1 3 0 2 4 1 3 0 ・・・・と繰り返し
7 0 2 4 6 1 3 5 0 2 4 6 1 3 5 0 2 4 6 1 3 ・・・・ 同上
9 0 2 4 6 8 1 3 5 7 0 2 4 6 8 1 3 5 7 0 ・・・ 同上
15 0 2 4 6 8 10 12 14 1 3 5 7 9 11 13 0 ・・ 同上
この下もずっと続くのだが省略。5,7の最初の0の列の上に0がないので素数。9は3に0があるので素数でなくそれが約数。飛ばして15だと列が2ずれ最初の列上に0の行が3,5とあり素数でなく約数が3,5になる。何処まで繰り返しても素数も分れば約数も分るオイラのprime number table。
オイラが考えた素数約数表は素数のでる法則を示している。完全だよ。この法則に従って素数が出てくる。その数字が素数かどうかはその数を下位の数字のn進法で現わしたときに末項に0が現れないことなので、それを求めればよい。
求め方の詳細はオイラのブログに示してあるので興味がある人は探してみて頂戴。完璧にその数が素数か否かが分るだけでなく約数までも分ってしまう。
ブログは数字の行列を書くようになっていないので1000までで終えたが、原理は同じなのでコンピがあればいくらでも増やしていける。
【感想】
分かりやすい。
勉強になりました
素数の法則性を発見したらいくら貰えるんですか。
「素数が登場する順番に法則はない」と書いてあるけど、言い切っていいのかな?
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