【高校数学(三角比)】三角比を使った不等式はコレで簡単に解けてしまう


- 三角比を使った不等式の問題の解き方を知りたい
- 三角比を使った不等式の問題を簡単に解く方法を知りたい
高校数学の三角比の分野でも、比較的難易度が高い「三角比の不等式」について説明していきます。
三角比の不等式を学ぶ前に、三角比の方程式は解けるようになっていますか?
もし、三角比の方程式を理解していないならば、まずは方程式を解けるようにしましょう。
それでは、学んで行きましょう。
各角度の大きさをチェックすることから始めよう
まずは、下準備です。
三角比の不等式を解くには単位円を使用すると理解しやすいです。
単位円というのは、半径が\(1\)の円のことです。
また、この単位円の中心を原点とした平面座標軸を書きましょう。
下の図のような感じです。
この横軸と縦軸をそれぞれ\(\cos\)軸と\(\sin\)軸とします。
※「\(\cos\)軸」「\(\sin\)軸」とは、正式な名称ではありません。わかりやすさを重視するため、本サイトではこのような言葉を使っています
必ず、横軸を\(\cos\)軸、縦軸を\(\sin\)軸としてください。
この円を使って三角比を考えていきます。
三角比から、代表的な角度(\(0^\circ, 30^\circ, 45^\circ, 60^\circ, 90^\circ, 120^\circ , 150^\circ, 180^\circ\))の「\(\cos\)軸」「\(\sin\)軸」の長さを考えていきましょう。
\(0^\circ\)と\(90^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さ
まずは、\(0^\circ\)と\(90^\circ\)からです。
\(0^\circ\)は、\(\cos\)軸方向に線を引っ張るだけですね。
同様に\(90^\circ\)は、\(\sin\)軸方向に線を引っ張るだけです。
上の図から\(0^\circ\)の場合の各軸方向の長さがわかりますね。
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= 0 \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= 1
\end{align}
一方、\(90^\circ\)の場合の各軸方向の長さは以下のようになります。
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= 1 \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= 0
\end{align}
\(30^\circ\)と\(150^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さ
次は、\(30^\circ\)と\(150^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さです。
それぞれの角度の三角形を、下の図のように描けばわかりますね。
\(30^\circ\)は、
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= \frac{1}{2} \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{align}
です。
\(150^\circ\)は、
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= \frac{1}{2} \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= -\frac{\sqrt{3}}{2}
\end{align}
です。
\(45^\circ\)と\(135^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さ
次は、\(45^\circ\)と\(135^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さです。
\(45^\circ\)は、
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= \frac{1}{\sqrt{2}} \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= \frac{1}{\sqrt{2}}
\end{align}
です。
\(135^\circ\)は、
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= \frac{1}{\sqrt{2}} \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= -\frac{1}{\sqrt{2}}
\end{align}
です。
\(60^\circ\)と\(120^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さ
最後は、\(60^\circ\)と\(120^\circ\)の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さです。
\(60^\circ\)は、
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= \frac{\sqrt{3}}{2} \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= \frac{1}{2}
\end{align}
です。
\(120^\circ\)は、
\begin{align}
\sin \text{軸方向の長さ} &= \frac{\sqrt{3}}{2} \\
\cos \text{軸方向の長さ} &= -\frac{1}{2}
\end{align}
です。
ここまでの図は理解できましたか?
各角度の\(\cos\)軸と\(\sin\)軸方向の長さは暗記する必要はありません。
ただし、角度が与えられたとき、いつでも自分で上の図を描いて、各軸の長さを求めることができるようになっておきましょう。
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三角比の不等式の問題を解いてみよう
では、上で説明したことを使って、三角比の不等式の問題を解いていきます。
\(\sin\)についての三角比の不等式
\(\sin\)についての三角比の不等式です。
\(0^\circ \le \theta \le 180^\circ\)とするとき、次の不等式を解け。
(1) \(\sin\theta \le \frac{1}{2}\)
(2) \(\sin\theta \ge \frac{1}{2}\)
この不等式の意味は、
(1) \(\sin \theta\)が\(\frac{1}{2}\)以下になる角度
(2) \(\sin \theta\)が\(\frac{1}{2}\)以上になる角度
を求めよということです。
しかし、こんなふうに言われると少し難しく感じます。
なので、上で紹介した図を思い出してください。\(\sin \theta\)は縦軸のことでした。
そして、こう言い換えましょう。
(1) 縦軸方向の長さが\(\frac{1}{2}\)以下になる角度
(2) 縦軸方向の長さが\(\frac{1}{2}\)以上になる角度
を求めよ。
こう言い換えることで、注目するポイントは縦軸方向の長さであることがわかります。
(1) \(\sin\theta \le \frac{1}{2}\)の解説
では、
$$\sin\theta \le \frac{1}{2}$$
から考えていきましょう。
この式が意味するところは、
縦軸方向の長さが\(\frac{1}{2}\)以下になる角度
ということでした。
そこで、縦軸方向の\(\frac{1}{2}\)の位置に、直線を引っ張りましょう(下図の赤い点線)。
そして、その直線が円と交わった点を結んで、三角形を描きます。
これを見ると、\(\sin{\theta}\)が\(\frac{1}{2}\)以下となるには、赤い点線よりも縦軸方向の長さが短くなればいいことがわかります。
したがって、三角形が\(30^\circ\)以下であるか、もしくは\(150^\circ\)以上であれば、\(\frac{1}{2}\)以下になります。
したがって、不等式
$$\sin{\theta} \le \frac{1}{2}$$
の答えは、
$$0^\circ \le \theta \le 30^\circ, \quad 150^\circ \le \theta \le 180^\circ$$
と言えます。
※問題は\(0^\circ \le \theta \le 180^\circ\)の範囲であったことに注意です。
(2) \(\sin\theta \ge \frac{1}{2}\)の解説
(1)とは逆に縦軸が\(\frac{1}{2}\)以上となる角度を考えましょう。
$$\sin\theta \ge \frac{1}{2}$$
単位円に線を引く場所は同じです。
赤い点線よりも\(\sin\)軸方向の長さが長くなればいいことがわかります(下図)。
三角形が\(30^\circ\)以上、\(150^\circ\)以下であれば縦軸が\(\frac{1}{2}\)以上になります。
よって、不等式、
$$\sin{\theta} \ge \frac{1}{2}$$
の答えは、
$$30^\circ \le \theta \le 150^\circ$$
になります。
\(\cos\)についての三角比の不等式
続いて、\(\cos\)についての三角比の不等式です。
\(0^\circ \le \theta \le 180^\circ\)とするとき、次の不等式を解け。
(1) \(\cos\theta \le \frac{1}{\sqrt{2}}\)
(2) \(\cos\theta \ge \frac{1}{\sqrt{2}}\)
この不等式の意味は、
(1) \(\cos\theta\)が\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)以下になる角度
(2) \(\cos\theta\)が\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)以上になる角度
を求めよということです。
例題①と考え方は同じですが、例題①では\(\sin\)を縦軸と置き換えました。
例題②では、\(\cos\)を横軸に置き換えて考えましょう。
(1) \(\cos\theta \le \frac{1}{\sqrt{2}}\)の解説
不等式、
$$\cos{\theta} \le \frac{1}{\sqrt{2}}$$
は言い換えると、
横軸(\(\cos\)軸)の長さが\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)以下になる三角形の角度を求めよ
となります。
では、図を見てみましょう。
赤い三角形は\(45^\circ\)の三角形です。
\(45^\circ\)の三角形の横軸の長さは、\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)になります。
この長さが\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)より左に三角形を作ればよいことがわかります。
つまり、緑色の範囲です。
したがって、不等式
$$\cos{\theta} \le \frac{1}{\sqrt{2}}$$
の答えは、
$$45^\circ \le \theta \le 180^\circ$$
です。
(2) \(\cos\theta \ge \frac{1}{\sqrt{2}}\)の解説
次は\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)以上になる場合です。
不等式、
$$\cos{\theta} \ge \frac{1}{\sqrt{2}}$$
は言い換えると、
横軸(\(\cos\)軸)の長さが\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)以上になる三角形の角度を求めよ
となります。
では、図を見てみましょう。
赤い三角形は\(45^\circ\)の三角形です。
\(45^\circ\)の三角形の横軸の長さは、\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)になります。
この長さが\(\frac{1}{\sqrt{2}}\)より右に三角形を作ればよいことがわかります。
つまり、緑色の範囲です。
したがって、不等式
$$\cos{\theta} \ge \frac{1}{\sqrt{2}}$$
の答えは、
$$0^\circ \le \theta \le 45^\circ$$
です。
\(\tan\)についての三角比の不等式
次に、\(\tan{\theta}\)についての三角比の不等式を解いていきましょう。
\(0^\circ \le \theta \le 180^\circ\)とするとき、次の不等式を解け。
(1) \(\tan\theta \le 1\)
(2) \(\tan\theta \ge 1\)
\(\tan\)について、\(45^\circ\)の三角形で考えてみましょう。
\(\tan\)の考え方は、
$$\tan{\theta} = \frac{\text{縦の長さ}}{\text{横の長さ}}$$
です。
上の図のように、\(\tan{45}^\circ\)のときは、横も縦も同じ長さなので\(1\)になりますね。
これは、横と縦の長さの比を考えていることになります。
\(\tan\)の三角比の不等式はこの比の考え方が重要になります。
(1) \(\tan\theta \le 1\)の解説
では、\(\tan{\theta} \le 1\)を考えます。
\(\tan{\theta} \le 1\)を言い換えると、
\(\frac{\text{縦の長さ}}{\text{横の長さ}}\)が\(1\)以下になる角度を求めよ
です。
\(45^\circ\)の三角形より小さい三角形と大きい三角形の\(\tan\)の値を比較してみましょう。
上の図で見るとわかるように、\(45^\circ\)以下の三角形だと\(\tan{45^\circ}\)は\(1\)以下になります。
一方、\(45^\circ\)以上の三角形だと\(\tan{45^\circ}\)は\(1\)以上になります。
\begin{align}
45^\circ\text{以下} \quad \rightarrow \quad \tan{45^\circ}\text{は\(1\)以下} \\
45^\circ\text{以上} \quad \rightarrow \quad \tan{45^\circ}\text{は\(1\)以上}
\end{align}
よって、問題(1)は\(0^\circ \le \theta \le 180^\circ\)の範囲で、\(\tan{\theta}\)が\(1\)以下になる角度を求めるので、
$$0^\circ \le \theta \le 45^\circ$$
なります。
(2) \(\tan\theta \ge 1\)の解説
では、\(\tan{\theta} \ge 1\)を考えます。
\(\tan{\theta} \ge 1\)を言い換えると、
\(\frac{\text{縦の長さ}}{\text{横の長さ}}\)が\(1\)以上になる角度を求めよ
です。
問題(1)の逆ですね。
しかし、逆だからといって、安易に答えを、
$$45^\circ \le \theta$$
としてはいけません。
\(\tan{90^\circ}\)は解がありませんし、\(90^\circ\)以上の\(\tan\)はマイナスの値になりますよね。
ということは\(\theta\)が\(90^\circ\)以上の時は、\(\tan{\theta}\)は\(0\)以下になります。
したがって(2)の答えは、
$$45^\circ \le \theta < 90^\circ$$
になります。
※\(90^\circ\)以下ではなく\(90^\circ\)未満になることに注意してください。
以上で三角比の不等式の説明を終わります。
三角比は、どうしてもイメージが必要になる単元です。
文章でわからない場合は、動画の解説などをみてみましょう!
まとめ
- 三角形の比を使った不等式の問題を解くには、\(\sin\)軸と\(\cos\)軸の座標に三角形を描き、それぞれの軸の長さを求めるようになっておく
- 描いた三角形から\(\sin\), \(\cos\), \(\tan\)を読み取り、その問題の不等式を満たすための角度はどこかを図から読み取る
- 問題で指定された角度の範囲に注意して、不等式を満たす角度の範囲を答える
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