相加相乗平均の証明から使い方までを丁寧に解説

2018年4月22日

この記事ではこんなことを紹介しています

ここでは、相加相乗平均の証明から使い方までを丁寧に解説しています。

相加相乗平均は高校で習う数学の公式です。

「その公式はどのようにしたら求めることができるのか?」、「公式はどんなときに使うのか?」を詳しく紹介していきます。

相加相乗平均とは?・公式の意味は?

まずは、相加相乗平均とは何かを知っておきましょう。

相加相乗平均の公式は、以下のようなものです。

相加相乗平均の公式

\(a>0\)、\(b>0\)であるとき、

\begin{align}
a + b \geq 2 \sqrt{ab}
\end{align}

この公式を証明していく前に、この式は何を表しているのかを考えます。

 

まず、この公式を少し変形してみましょう。

右辺の\(2\)を左辺に移項します。すると、

\begin{align}
\frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab}
\end{align}

となりますね。

 

ここで、左辺の、

$$\frac{a+b}{2}$$

に注目すると、これは\(a\)と\(b\)を足して\(2\)で割っています。

すなわち、\(a\)と\(b\)の平均をとっていることがわかります。

この平均の正式な名称は”相加平均”です。

 

これが、”相加”の部分です。

相加は、

”全ての値を足す”

という意味を持ちます。

 

続いて、右辺の、

$$\sqrt{ab}$$

に注目すると、これは\(a\)と\(b\)を掛けて、平方根(ルート)をとっています。

これもある意味、平均ととれるでしょう。

普段、私たちが使っている平均ではないですが、このような平均の取り方があってもおかしくはありません。

このような平均の取り方は”相乗平均”と呼ばれており、実際に使われている分野も多くあります。

※このあたりの説明に納得できなくてもこの時期を読むにあたっては問題ありませんので、読み進めてオッケーですよ。

 

相乗は、

”全ての値を掛ける”

という意味を持ちます。

 

つまり、相加相乗平均の公式の意味は、

足し算と掛け算の平均だったら足し算の平均の方が基本的に大きくなるよ

という意味なのです。

ただし、\(a=b\)のときは、相加平均と相乗平均は同じになります。

 

どうでしたでしょうか?まずは、公式の意味を大雑把でよいですので、知っておきましょうね。

 

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相加相乗平均の証明

続いて、相加相乗平均の式の証明をやっていきましょう。

相加相乗平均は、上で出てきた、\(a\)と\(b\)の2つの変数のものから、3つの変数やもっとたくさんの変数に対するものがあります。

平均は変数がいくつあっても出せるものですからね。

ここでは、その一つひとつに対して、証明を紹介していきます。

 

もちろん、すべて知る必要はありません。自分が知りたいところだけを読んでいただければ十分です。

変数が2つの場合

まずは、変数が2の場合の相加相乗平均の公式の証明です。

すでに上で登場したように、公式は、

相加相乗平均の公式(2変数)

\(a>0\)、\(b>0\)であるとき、

\begin{align}
a + b \geq 2 \sqrt{ab}
\end{align}

となります。

 

まずは、公式の両辺を二乗しましょう。

すると、

\begin{align}
(a + b)^2 & \geq (2 \sqrt{ab}) \\
a^2 + 2ab + b^2 & \geq 4ab \\
a^2 – 2ab + b^2 & \geq 0
\end{align}

となります。ここまではいいですか?

 

つづいて左辺は、次のように変形できます。

\begin{align}
a^2 – 2ab + b^2 = (a-b)^2
\end{align}

\((a-b)^2\)は必ず\(0\)以上(どんな数(実数)も二乗すれば正となる)です。

すなわち、

\begin{align}
(a-b)^2 \geq 0
\end{align}

となり、相加相乗平均が成り立つことがわかります。

 

また、

\begin{align}
(a-b)^2 = 0
\end{align}

となる\(a=b\)のときに、相加相乗平均もイコールの式になります。

 

相加相乗平均を導く方法

相加相乗平均を導いていく証明方法もあります。

さきほどと逆のことをしていけばよいのです。

 

まず、次の式が成り立つことはわかっています。

\begin{align}
(a-b)^2 \geq 0
\end{align}

どんな実数の二乗すれば正ですから。

 

この式を展開すると、

\begin{align}
(a-b)^2 & \geq 0 \\
a^2 – 2ab + b^2 & \geq 0
\end{align}

となります。

両辺に\(4ab\)を足しましょう。

\begin{align}
a^2 – 2ab + b^2 + 4ab & \geq 0 + 4ab \\
a^2 + 2ab + b^2 & \geq 4ab
\end{align}

最後に、左辺を因数分解して、

\begin{align}
a^2 + 2ab + b^2 & \geq 4ab \\
(a + b)^2 & \geq 4ab \\
a + b & \geq 2 \sqrt{ab}
\end{align}

とすれば、相加相乗平均の公式を導くことができました。

 

変数が3つの場合

変数が3つの場合の相加相乗平均の公式は、次のようになります。

相加相乗平均の公式(3変数)

\(a>0\)、\(b>0\)、\(c>0\)であるとき、

\begin{align}
a + b + c \geq 3 (abc)^\frac{1}{3}
\end{align}

この公式が成り立つことを証明しましょう。

 

まずは、以下の式からはじめます。

\begin{align}
x^3 + y^3 + z^3 -3xyz \tag{1}
\end{align}

ただし、\(x, y, z\)は正とします。

この式は、少し難しいですが、因数分解すると、

\begin{align}
x^3 + y^3 + z^3 -3xyz = (x + y + z) (x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx)
\end{align}

となります。

この式は成り立つことは、実際に右辺を展開すればわかりますが、ここでは割愛します。

上の式は、結構有名な因数分解の公式として知られていますので、別途しらべてみてください。

 

さて、上式の右辺の、

$$(x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx)$$

の部分ですが、次のように変形できます。

\begin{align}
x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx & = \frac{2(x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx)}{2} \\
& = \frac{2x^2 + 2y^2 + 2z^2 – 2xy – 2yz – 2zx}{2} \\
& = \frac{x^2 + x^2 + y^2 + y^2 + z^2 + z^2 – 2xy – 2yz – 2zx}{2} \\
& = \frac{(x^2 – 2xy + y^2) + (y^2 – 2yz + z^2) + (z^2 – 2zx + x^2)}{2} \\
& = \frac{(x – y)^2 + (y – z)^2 + (z – x)^2}{2}
\end{align}

ここで、上の式の2行目から3行目にするとき、

$$2x^2 = x^2 + x^2, \quad 2y^2 = y^2 + y^2, \quad 2z^2 = z^2 + z^2$$

を使いました。

 

上の式の最後の行で出てきた\((x-y)^2, (y-x)^2, (z-x)^2\)は必ず正です。

したがって、

$$(x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx) \geq 0$$

ということがわかります。

また、この両辺に\((x+y+z)\)(いま、\(x, y, zは正なので必ず正\))を掛けたものも必ず正になることから、

$$(x + y + z)(x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx) \geq 0$$

が成り立ちます。

 

これで、最初に考えていた式(1)が、

\begin{align}
x^3 + y^3 + z^3 -3xyz \geq 0
\end{align}

であることがわかりました。

 

最後に、

\begin{align}
a = x^3 \\
b = y^3 \\
c = z^3
\end{align}

とすれば、

\begin{align}
x^3 + y^3 + z^3 – 3xyz & \geq 0 \\
a + b + c & \geq 3 (abc)^\frac{1}{3}
\end{align}

となり、3変数の相加相乗平均の公式が導けました。

 

変数がn個の場合

最後の証明は変数が\(n\)個の場合です。

相加相乗平均の公式(n変数)

\(a_1, a_2, \cdots, a_n\)を\(n(\geq 2)\)個の正の数とするとき、

$$\frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n} \geq (a_1 a_2 \cdots a_n)^\frac{1}{n}$$

この証明には”数学的帰納法”を使っていきます。

数学的帰納法

はじめに数学的帰納法を忘れた人のために、簡単に復習しておきましょう。

数学的帰納法

自然数\(n\)に関する命題をPとして、その命題\(P(n)\)がすべての自然数\(n\)に対して成り立つことを証明するための方法です。

  1. \(P(1)\)が成り立つことを示す
  2. 任意の自然数\(k\)に対して、\(P(k)\)が成り立つことを仮定する
  3. 2のように仮定することで、\(P(k+1)\)が成り立つことを証明する

この3ステップを踏めれば、証明が成功です。

 

では、まずステップ1からですが、いまの場合は自然数は\(2\)から始まっていますので、\(P(2)\)が成り立つことを証明します。

つまり、

$$\frac{a_1+a_2}{2} \geq \sqrt{a_1 a_2}$$

ですね。

これは既に2変数の相加相乗平均の式のところで証明してます。

 

次に、ステップ2です。任意の自然数\(k\)に対して、相加相乗平均の式が成り立つと仮定すると、

$$\frac{a_1+a_2+\cdots+a_k}{k} \geq (a_1 a_2 \cdots a_k)^\frac{1}{k}$$

となります。

少し変形して、

$$a_1+a_2+\cdots+a_k – k (a_1 a_2 \cdots a_k)^\frac{1}{k} \geq 0 \tag{2}$$

としておきます。

 

ここで、\(x > 0\)のとき、

\begin{align}
f(x) & = a_1 + a_2 + \cdots + a_k + x^{k+1} – (k+1) (a_1 a_2 \cdots a_k )^\frac{1}{k+1} x
\end{align}

について考えます。

この関数の最小値は、

\begin{align}
f(x) = a_1 + a_2 + \cdots + a_k  – k (a_1 a_2 \cdots a_k )^\frac{1}{k}
\end{align}

なります。※この導出については、以下をご覧ください。

\(f(x)\)の最小値の導出

\(x>0\)のとき、関数\(f(x)\)、

\begin{align}
f(x) = a_1 + a_2 + \cdots + a_k + x^{k+1} – (k+1) (a_1 a_2 \cdots a_k )^\frac{1}{k+1} x
\end{align}

の最小値を求めます。

 

\(f(x)\)を\(x\)で微分すると、

\begin{align}
f^\prime(x) & = (k+1) x^k – (k+1) \left(a_1 a_2 \cdots a_k \right)^{k+1} \\
& = (k+1) \left\{x^k – \left(a_1 a_2 \cdots a_k \right)^\frac{1}{k+1} \right\}
\end{align}

となります。

ここで、

$$\alpha = (a_1 a_2 \cdots a_k )^\frac{1}{k(k+1)}$$

とすれば、この両辺を\(k\)乗すると、

$$\alpha^k = (a_1 a_2 \cdots a_k )^\frac{1}{k+1}$$

なので、\(f^\prime(x)\)は、

\begin{align}
f^\prime(x) = (k+1) (x^k – \alpha^k)
\end{align}

と表すことができます。

\(f^\prime(x)\)が\(0\)のとき、

\begin{align}
f^\prime(x) & = (k+1) (x^k – \alpha^k) = 0 \\
x^k & = \alpha^k
\end{align}

極値となります。

また、\(f^\prime(x) > 0\)、すなわち\(x^k > \alpha^k\)のときに増加、\(f^\prime(x) < 0\)、すなわち\(x^k < \alpha^k\)のときに減少するので、

\(x\) \(\alpha\)
\(f^\prime(x)\) 0
\(f(x)\) \(\searrow\) 極小値 \(\nearrow\)

となります。

 

極小値は、\(x=\alpha=(a_1 a_2 \cdots a_k)^\frac{1}{k(k+1)}\)を\(f(x)\)に代入して、

\begin{align}
f(\alpha) & = a_1 + a_2 + \cdots + a_k + \alpha^{k+1} – (k+1) (a_1 a_2 \cdots a_k )^{k+1} \alpha \\
& = a_1 + a_2 + \cdots + a_k + \alpha^{k+1} – (k+1) \alpha^k \alpha \\
& = a_1 + a_2 + \cdots + a_k – k \alpha^{k+1} \\
& = a_1 + a_2 + \cdots + a_k – k (a_1 a_2 \cdots a_k)^\frac{1}{k}
\end{align}

となり、最小値\(f(\alpha)\)が求まりました。

ここで、式(2)より、

\begin{align}
a_1+a_2+\cdots+a_k \geq k (a_1 a_2 \cdots a_k)^\frac{1}{k}
\end{align}

なので、\(f(x)\)は、

$$f(x) \geq f(\alpha) \geq 0 \quad \text{ただし、\(x \geq 0\)}$$

となります。

 

よって、\(x=(a_k+1)^\frac{1}{k+1}\)に対して、

$$f\left\{(a_k+1)^\frac{1}{k+1}\right\} \geq 0$$

となり、以下の不等式が成り立つことがわかります。

$$a_1 + a_2 + \cdots + a_k + a^{k+1} – (k+1) (a_1 a_2 \cdots a_k a_{k+1})^\frac{1}{k+1} \geq 0 $$

 

これで、数学的帰納法のステップ3まで終わりました。

\(n\)変数の場合の証明は終わりです。

 

相加相乗平均の不等式の使い方

証明ができたところで、実際に相加相乗平均の不等式を使ってみましょう。

色々な問題を紹介していきます。

問題その①

問題①

\(x > 0\)、\(y > 0\)のとき、

$$\left( x + \frac{1}{y} \right) \left( y + \frac{4}{x} \right)$$

の最小値を求めよ。

また、そのときの\(xy\)の値は何か。

\(2\)変数の相加相乗平均の不等式を使って解く問題です。

 

まずは、展開します。

\begin{align}
\left( x + \frac{1}{y} \right) \left( y + \frac{4}{x} \right) & = xy + 4 + 1 + \frac{4}{xy}\\
& = xy + \frac{4}{xy} + 5 \\
\end{align}

 

ここで、

$$A \equiv xy$$

とすると、

\(x>0\)、\(y>0\)であるため、\(A > 0\)、\(\frac{1}{A} > 0\)となります。

 

相加相乗平均の不等式より、

\begin{align}
A + \frac{4}{A} & \geq 2 \sqrt{A \frac{4}{A}} \\
A + \frac{4}{A} & \geq 4
\end{align}

となるため、

$$A + \frac{4}{A} + 5 \geq 4 +5 = 9$$

が成り立ちます。

 

等式が成り立つのは、

\begin{align}
A & = \frac{4}{A} \\
A & = 2 \quad (A > 0\text{であるため})
\end{align}

であるため、\(xy=2\)のとき、最小値\(9\)となります。

 

重要ポイント

相加相乗平均を使用するときの重要ポイントは、

$$x + \frac{1}{x}$$

のような形を見つけることです。

その理由は、相乗平均を取るとき、\(x\)と\(\frac{1}{x}\)を掛けると、

$$x \times \frac{1}{x} = 1$$

と\(x\)がキャンセルし、消えてしまうからですね。

 

問題その②

問題②

\(x > 0\)のとき、

$$x + \frac{9}{x+2}$$

の最小値を求めよ。

また、そのときの\(x\)の値は何か。

この問題も、

$$x + \frac{1}{x}$$

の形を作るために、以下のように変形します。

\begin{align}
x + \frac{9}{x+2} = x + 2 + \frac{9}{x+2} – 2
\end{align}

 

\(A \equiv x+2\)と置くと、

\begin{align}
x + 2 + \frac{9}{x+2} – 2 = A + \frac{9}{A} -2
\end{align}

となり、ここで、

$$A + \frac{9}{A}$$

の部分に相加相乗平均の不等式を使えば、

\begin{align}
A + \frac{9}{A} \geq 2 \sqrt{A \frac{9}{A}} = 6
\end{align}

です。

 

よって、

\begin{align}
A + \frac{9}{A} -2 \geq 6 – 2 = 4
\end{align}

となり、

\begin{align}
x + \frac{9}{x+2} \geq 4
\end{align}

となります。

よって、最小値は\(4\)とわかります。

 

また、等号が成り立つのは、

\begin{align}
A & = \frac{9}{A} \\
A & = 3 \quad (A > 0\text{であるため}) \\
x+2 & = 3 \\
x & = 1
\end{align}

となり、\(x=1\)のとき最小値をとります。

 

 

疲れたので、いまはこの辺にしときます。

また、気が向いたら、問題を追加していきます。

 

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まとめ

  • 相加相乗平均の不等式とは、相加平均の方が相乗平均よりも大きいことを示した式である
  • 相加相乗平均の不等式の変数が\(2\),\(3\),\(n\)の場合について、証明した
  • 相加相乗平均は最小値を求める時などに使用する

※コメントの反映には少し時間がかかります

2018年4月22日数学の面白いネタ

Posted by yoshi