エフロンのサイコロ – どのサイコロが一番強い?

”エフロンのサイコロ”というサイコロを知っていますか?
それは、ジャンケンのような性質を持った不思議なサイコロです。
この記事ではエフロンのサイコロは通常のサイコロとどのように違うのか。どのような性質を持っているのかをゲームを通して丁寧に説明しています。
エフロンのサイコロとは
二人でできるゲームをしてみよう
みなさん、サイコロというものを一度は使ったことがあると思います。正六面体で、各面には1から6までの数字が書かれています(下の画像)。よく人生ゲームなので使われたりしますね。
サイコロを使った二人で遊ぶゲームをしてみましょう。ルールは簡単です。
ここに、それぞれ色が違う四つのサイコロがあります。色が違うだけでその他は全く一緒です。
先攻と後攻を決め、二人ともこの四つのサイコロの中から一つを選びます。ただし、先攻が選んだサイコロは後攻は選べません。残りの三つのサイコロから選びます。
各プレーヤーは選んだサイコロを転がし相手よりも大きな数字を出した方に1ポイントが入ります。
このように、
- 四つ(後攻は三つ)の中から一つサイコロを選ぶ
- サイコロを振る
- サイコロの目(数字)が大きかった方に1ポイントが入ります
という手順を10回繰り返します。
10回やって最終的にポイントが多かった方が勝ちです。
さて、先行(先にサイコロを選べる)か後攻(後にサイコロを選べる)かどちらを選ぶ方が有利でしょうか?
引っかけ問題ではありません。
答えは、「どっちを選んでも、勝つ確率は一緒」です。
当然ですよね。すべてのサイコロは一緒なのですから、どのサイコロを選ぼうと勝つ確率は同じのはずです。先攻も後攻も関係ありません。
エフロンのサイコロでゲームをするとどうなる?
さて、ここからが本番です。使う四つのサイコロを変えてみましょう。サイコロは以下のようなものを使います。
- 赤色のサイコロの目:4が四面、0が二面
- 青色のサイコロの目:3が六面
- 黄色のサイコロの目:6が四面、2が四面
- 緑色のサイコロの目:5が三面、1が三面
これが、”エフロンのサイコロ”と呼ばれるものです。
このサイコロを使って、先ほどのゲームをしましょう。以下はルールの復習です。
- 先攻、後攻を決める
- 四つ(後攻は三つ)の中から一つサイコロを選ぶ
- サイコロを振る
- サイコロの目(数字)が大きかった方に1ポイントが入ります
- これを10回行い、ポイントの高い方が勝ち
今度は、先攻と後攻でどっちが有利でしょうか?
答えを言ってしまうと、「後攻の方が有利」です。それは、なぜか?
各サイコロには、相性があり、”このサイコロを選ぶと、このサイコロには強いがこのサイコロには弱い”といったことが起こるからです。
例えば、先攻が青いサイコロを選んだとします。すると、後攻は赤いサイコロを選べば勝つ確率が高いです。
4の目が出れば必ず勝ちますし、4の目は六面のうち四面を占めていますからね。勝つ確率は、
$$\text{赤いサイコロが青いサイコロに勝つ確率} = \frac{2}{3}$$
です。半分以上の確率で勝つのですから、10回やれば7,8回勝つことができるでしょう。(※もちろん、運悪く負けることもありますが)
もう一つ例を出すと、先攻が赤いサイコロを選んだ場合はどうでしょう。
この場合は、後攻は緑のサイコロを選ぶことにより、勝つ確率を2/3にすることができます。
緑のサイコロを振って、5の目が出れば無条件に勝ちます。その確率は1/2です。例え、1/2の確率で1の目が出てしまっても、赤いサイコロの目が0が出れば勝ちです。その確率は、1/6(1/2×1/3)です。よって、
$$\frac{1}{2} \times \frac{1}{6} = \frac{2}{3}$$
となり、有利なことが分かります。
このように、すべてのサイコロが得意としている相性をまとめると、
\begin{align}
\text{赤いサイコロが青いサイコロに勝つ確率} = \frac{2}{3} \\
\text{青いサイコロが黄色いサイコロに勝つ確率} = \frac{2}{3} \\
\text{黄色いサイコロが緑のサイコロに勝つ確率} = \frac{2}{3} \\
\text{緑のサイコロが赤いサイコロに勝つ確率} = \frac{2}{3} \\
\end{align}
となります。図にすると、下のような感じです。
じゃんけんのような関係になっているのですね。なので、エフロンのサイコロを使った場合、後出しじゃんけんができる後攻が有利なのです。
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後攻がランダムにサイコロを決める場合はどうなる?
次は、少しルールを変更してみましょう。後攻は自分でサイコロを決めることができず、残りの三つのサイコロの中から同じ確率でランダムに決まるのです。
- 先攻、後攻を決める
- 先攻は四つの中から一つサイコロを選ぶ
- 後攻は残りの三つからランダムにサイコロが決まる
- サイコロを振る
- サイコロの目(数字)が大きかった方に1ポイントが入ります
- これを10回行い、ポイントの高い方が勝ち
この場合は、先攻と後攻でどっちが有利でしょうか?それとも有利不利はないのでしょうか?
先攻が赤いサイコロを選んだ場合について、他の三つのサイコロに対する勝率を計算してみましょう。すると、次の表のようになります。
勝負するサイコロの色 | 赤のサイコロが勝つ確率 |
---|---|
青 | 2/3=66.66…% |
黄色 | 4/9=44.44…% |
緑 | 1/3=33.33…% |
すでに見たように青いサイコロに対しては、約67%の確率で勝つことができます。
逆に緑のサイコロに対しては、相性が悪く約33%の確率で負けてしまいます。
黄色のサイコロにも少し相性が悪く、約44%の確率でしか勝てません。
これらのことから、赤いサイコロを選んだ場合、後攻が青のサイコロになったときにしか勝てる確率が相手を上回らないということですね。赤を選ぶのはあまり良い選択ではないような気がします。
他の色についても、勝率をまとめてみました。
赤 | 青 | 黄 | 緑 | |
赤いサイコロ | ー | 2/3 | 4/9=約44% | 1/3 |
青いサイコロ | 1/3 | ー | 2/3 | 1/2 |
黄色いサイコロ | 1/2 | 1/3 | ー | 2/3 |
緑のサイコロ | 2/3 | 5/9=約55% | 1/3 | ー |
それぞれのサイコロで相性が一番良いサイコロと悪いサイコロがあります。良いときは2/3の確率で勝ちますし、悪いときは1/3の確率でしか勝てません。
注目したいのは、相性がない組み合わせの時です。下の図で描くと、対角線上のサイコロと勝負するときです。
青と緑では1/2で互角なのですが、黄色と赤は互角ではありません。若干ではありますが、黄色のサイコロが勝つ確率が高くなっています。
したがって、勝率から勝ち負けの表を作ると、
赤 | 青 | 黄 | 緑 | |
赤いサイコロ | ー | 勝ち | 負け | 負け |
青いサイコロ | 負け | ー | 勝ち | 引き分け |
黄色いサイコロ | 引き分け | 負け | ー | 勝ち |
緑のサイコロ | 勝ち | 勝ち | 負け | ー |
のようになります。
- 赤いサイコロ:1勝2敗
- 青いサイコロ:1勝1敗1引き分け
- 黄色いサイコロ:1勝1敗1引き分け
- 緑のサイコロ:2勝1敗
つまり、先攻は緑のサイコロを選ぶのがベストの選択だということです。
後攻がランダムにサイコロが決まってしまう場合は、先攻が有利となりますね。
色々なサイコロ
エフロンのサイコロは、1900年代の後期にアメリカ・ミネソタ州のエフロン・ブラッドリーによって発見されました。
彼は、統計や確率論の発展に大きく貢献した人物です。
彼がエフロンのサイコロを発見した後も、様々なサイコロが発見されています。
- 1から24までの連続した数字が使われているエフロンのサイコロを少し変えたもの
- 三つすべてのサイコロが勝率17/36を持つMinwinのサイコロ
- 五つのサイコロがじゃんけんの関係を持つGrimeのサイコロ
これら以外にも不思議な性質を持ったたくさんのサイコロが発見されました。
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まとめ
- エフロンのサイコロとは、出た目の大きさを比べるとき、サイコロが相性の良い相手と悪い相手を持った”じゃんけん”のような性質がある四つのサイコロである
- すべてのサイコロが同じ確率(勝率)の組み合わせを持つわけではなく、すこしだけ有利なサイコロと不利なサイコロが存在する
- エフロンのサイコロだけでなく、似たような面白い性質を持つサイコロが多く発見されている
ディスカッション
コメント一覧
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何をいうてんねーん!
黄色のサイコロの面が、6が4面、2が4面と書いてありますが、6が2面、2が4面の間違いだと思います。