確率の誤解 – 裏が続けて出たからといって次は表が出やすくなったりはしない

この記事では、このようなことについて書いています

ここでは、確率についての理解が間違っている人へ向けて、ゲームやガチャでの確率の考え方を紹介します。

読者の対象は以下のような人達です。

  • 確率にまつわる初歩的な話に興味がある人
  • 確率論を誤解してしまっている人
  • ガチャなどで欲しいアイテムがなかなか取れなくてやきもきしてるゲーマー

確率の誤解 – ゲームやガチャで欲しいアイテムが出ないわけ

確率を学ぶとき、だいたい最初はコインやサイコロを使います。

独立事象(起こる事柄が互いに関連していない)を実例から学ぶには、とても便利なアイテムですから。

そして、コインがずっと表や裏を出し続けることは、なかなかないことだということも私たちは経験から知っています。

そのために、例えば裏が四回続けて出た場合、次も裏が出たとすれば、それは、

$$\left(\frac{1}{2} \right)^4 = \frac{1}{32}$$

の確率でしか起きない出来事なのだから、次は表が出やすいはずだと、そんな風に考えてしまうケースがあるようです。

これが誤解であることを、出来るだけわかりやすく解説してみたいと思います。

 

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ずっとハズレが続いてるんだから、そろそろアタリが出るはずだ…というわけではない

今の時代、コンピューターゲームやスマホゲームを全くしない人は、それほど多くはないでしょう。

やったことはなくても、だいたいみんな見たことはあるはずです。

 

ドラクエなどのロールプレイングゲームでは、アイテムを取るために同じ敵を倒し続けたりすることがあります。

何百体、何千体と同じ敵を倒して、やっとお目当てのアイテムが取れたり取れなかったり。

 

また最近では、スマホゲームでガチャと呼ばれる宝くじのようなシステムで何度もくじを引き、お目当てのアイテムをゲットするというアイテムの入手方法が主流となっています。

 

そんなことを続けていると、誰しも思うものです。

  • 「アイテム入手率が0.1%で、もう千体倒したんだから、そろそろ取れるはずだ」
  • 「これだけ、ガチャを回したんだから、次はレアアイテムが出るはずだ」

と。

たいてい、みんなそう考えます。自然な発想です。

ところが、残酷なことに、この考え方は間違っているのです。

 

一体も倒していない、アイテム獲得のための作業を開始した時点と、千体を倒した時点とを比較すると、次の敵を倒したときにアイテムを獲得できる確率は、全く一緒です。

どちらの時点でみても、次の敵がアイテムをくれる確率は\(0.1\%\)。

どうしてそうなってしまうのでしょうか?

 

コインを投げて考えよう

確率を理解するためには、コインは便利な道具です。いつも使うものですが、今回も使わせてもらいましょう。

まずはコインを三回投げる単純なケースで考えてみましょう。

 

もちろん、コインは理想的なコインで、表も裏も1/2の確率で出現するものとし、投げたコインを鳥がくわえて持ち去ってしまうとか、つかみ損ねてどこかへ転がってしまうだとか、そういうことはないものとします。

 

コインを三回投げるということは、その出現パターン(すべてのパターン)は、

$$\text{コインを三回投げるときのすべてのパターン} = 2^3 = 8$$

ですから、8パターンがあることになります。

 

それを全て書き出してみましょう。

ただし、ここでは表を○、裏を×であらわします。

  1. ○-○-○
  2. ○-○-×
  3. ○-×-○
  4. ○-×-×
  5. ×-○-○
  6. ×-○-×
  7. ×-×-○
  8. ×-×-×

8パターンすべてを書き出しました。

 

さて、例えば「裏が二回続けて出たとき、次は表と裏のどちらが出やすいか?」と考えた場合、どう答えるべきでしょうか?※すでに二回コインを投げた後であることに注意

上記の8パタ-ンを見てください。

裏が三回続けて出るパターンは、8番目のパターンだけですよね。

ということは、裏が三回続く確率は1/8ということになります。

 

そこで、

「裏が三回続くという確率は1/8なのだから、裏が三回続かない確率は7/8である。よって、裏が続かない確率は続く確率の7倍もあるのだから、続かないと考えるのが妥当である。したがって、次のコインは表の方が出やすい」

とまぁ、そんなことを考えてしまうんですね。

 

この考え方の問題点は、視点を混同していることです。

状況をおさらいしましょう。

今回は、すでにコインを二回投げ、二回とも裏が出た場面を想定しています。

そして、次に投げるコインは表と裏、どちらが出やすいか?と考えているのです。

 

コインを一回も投げていない状況から、コインを三回投げたらどうなるかと考えているのでもないし、コインを二回投げた状況から、さらにコインを三回投げたらどうなるかを考えているわけでもありません。

ところが、「次は裏が出やすい」という考え方は、コインを二回投げた状況から始まるにもかかわらず、これからコインを三回投げるときの確率を計算しています。

 

なぜかと言えば、上に書いた8つのパタ-ンは、「これからコインを三回投げるときの出現パターン」だからです。

 

実際はすでに二回投げてしまっているわけですから、コインを投げ始める前には存在していたパタ-ンが除外されてしまっています。

つまり、二回続けて裏が出るパターンであった7番目と、8番目のパターン以外の、1から6番目のパターンは、もう現実世界によって否定されたのです。

 

確率論というのは、可能性を扱っています。

コインを投げる前には全部表が出る可能性もありましたが、実際に二回投げて両方が裏であった時点で、その可能性は消え去りました。

 

残された可能性はただ2つ。

7. ×-×-○
8. ×-×-×

だけです。

 

さて、それでは三回目のコインが裏を出す確率はどのくらいかと言えば、残された2パターンのうち、1パターンが満たすわけですから1/2になります。

1/8ではありません。

 

というわけで、「裏が二回続けて出たときでも次は表が出やすい」、なんてことにはならないのです。

 

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結果が確定した出来事は、確率の計算からは除外される

コインを投げる回数をどれだけ増やしても、考え方は一緒です。

コインを100回投げて、全部裏が出たとしましょう。

それでも、次に表が出る確率は1/2です。

 

もっとも…ここまで裏ばかりが出てしまうと、「裏しか出ないコインなんじゃないか」なんて疑いたくなってくるので、今度はむしろ、裏が出る確率の方が高いなんて言いたくなるかも知れません。

今回は、コインは表裏がそれぞれ1/2で出現する理想的なコインである、という前提がありますので、そういう疑いは持たないことにします。

 

このときの考え方として重要なのは、

すでに結果が出た出来事に関しては、もう確率の計算には含めない

ということです。

 

コインを投げる前には存在していた無数の可能性、現実世界がなぞるかも知れなかった幾多のパターンが、コインを投げたことで消え去っていきます。

それらはもう、結果が確定してしまいましたので、可能性としての計算は無用です。

出来事が決まったのに、可能性を求めても仕方ないですよね。

 

そしてこの考え方は、コイン以外でも通用します。

サイコロでも一緒です。

サイコロは二回続けて1が出たから、次は1以外の数が出やすい、というわけではありません。

それが理想的なサイコロであるならば、どれだけ続けて1が出た後であっても、次に1が出る確率は1/6なのです。

 

ハズレが続いたということは、ハズレが続かないパターンが否定されたということ

さて、ゲームの話に戻しましょう。

  • アイテム出現率0.1%の敵を1000回倒してまだ出ない
  • 出現率0.1%のレアアイテムを狙って1000回もガチャを回したがまだ出ない

ということは、1000回までにアイテムが出てくれるパターンが否定されたということです。

 

それは、敵を倒し始める前は存在していた可能性なのですが、結果を確認したことで、現実世界によって否定されました。

もう過ぎ去り、結果が出た事象に関しては、確率の計算には含めません。

 

ということは、あとどれくらい倒せばアイテムがもらえるのかの計算には、過ぎ去った1000回分は関わってこないのです。

 

「これからどのくらい倒したらお目当てが見つかるのか?」

それは、これから一体目を倒し始める新人と、もう1000体を倒したベテランとの間に、違いはありません。

お互い同じ条件で、一体につき0.1%の判定を繰り返していくのです。

 

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まとめ

  • 裏が続けて出たからといって次は表が出やすくなったりはしない
  • 結果が出たということは、結果が出る前には存在していた、様々な可能性が消え去ったということ
  • 結果が出た出来事は、確率の計算から除外する

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