円を利用した三平方の定理の証明

三平方の定理(ピタゴラスの定理)には多くの証明方法がありますが、ここでは円を利用した証明を紹介しましょう。
図形を描いて、その長さを調べていくだけで三平方の定理が証明できてしまう面白い証明方法です。
三平方の定理の簡単な復習
三平方の定理は古代ギリシャの数学者ピタゴラスによって発見されたためピタゴラスの定理とも言います。
三平方の定理は直角三角形の各辺の長さの関係を示した定理
です。
例えば以下のような直角三角形があったとします。
各辺の長さは図に示しているように、直角な角に接している辺の長さが\(a\)と\(b\)であり、斜辺が\(c\)です。
このとき、各辺の長さの関係は、
$$a^2 + b^2 = c^2$$
となります。これが三平方の定理です。
ここでは、この三平方の定理を円を使って証明していきましょう。
円を使った証明の方法は三つあります(私が知っている限り)。
それらについて順番に紹介していきます。
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三角形に内接する円を描いて証明する方法
まずは、三角形に内接する円を描いて証明する方法です。
以下の直角三角形を考えます。
この直角三角形に内接する円を描きます。
円の半径は\(r\)であるとします。
この\(r\)を三角形の各辺の長さ\(a,b,c\)で表現する方法を考えましょう。
それには、まず下の図の⇔で示した直線の長さに注目します。
これは、円の半径\(r\)と\(a\)を使って、次のように書けます。
$$a-r$$
次に、下の図の色を付けた三角形(青と緑)が合同であることに注目します。
これより、上の図の⇔で示した直線の長さも\(a-r\)であることが分かります。
次に同じようにして、下の⇔で示した直線の長さも求めましょう。
まったく同じ方法で求められるので以下に図だけ載せておきます。
⇔の長さは\(b-r\)ですね。
これより、\(c\)の長さは、
$$c=(a-r)+(b-r)$$
と表せることが分かります。
この式を変形して\(r\)についての式にすると、
$$r=\frac{a+b-c}{2}$$
となります。
さて、次に直角三角形の面積を二種類の方法で表現してみましょう。
一つは、単純に三角形の\(b\)を底辺として、高さを\(a\)とすれば、
$$\text{直角三角形の面積} = \frac{1}{2} \times b \times a = \frac{1}{2}ab$$
です。
もう一つは、底辺を\(a,b,c\)とした三つ三角形(下の図の色付き三角形)のそれぞれの面積を求め足す方法です。
これはそれぞれの辺が底辺となり、高さはどれも\(r\)なので、
$$\text{直角三角形の面積} = \frac{1}{2} ar + \frac{1}{2} br + \frac{1}{2} cr = \frac{1}{2} (a+b+c)r$$
となります。
二つの方法で求めた面積は当然等しいはずですので、
$$\frac{1}{2}ab = \frac{1}{2} (a+b+c)r$$
が成り立ちます。
ここで、はじめに求めた、
$$r=\frac{a+b-c}{2}$$
を使って\(r\)を消去すれば、
\begin{align}
\frac{1}{2}ab & = \frac{1}{2} (a+b+c) \frac{a+b-c}{2} \\
ab & = \frac{1}{2} (a+b+c) (a+b-c) \\
2ab & = (a+b)^2 – c^2 \\
2ab & = a^2 + 2ab + b^2 – c^2 \\
a^2 + b^2 & = c^2
\end{align}
となり三平方の定理が現れました。
これが直角三角形に内接する円を描いて証明する方法です。
直角三角形の角を中心とした円を描いて証明する方法
次は、直角三角形の角を中心とした円を描いて証明する方法を紹介します。
まずは、下の図のように三角形の頂点Bを中心として頂点Cを通る円を描きましょう。
頂点ABを結ぶ直線と円の接点を点Pとしました。
ここで、方べきの定理というものを使います。
方べきの定理とは、下の図のように、円のある二点(A, B)を通る直線を二本描いたとき、それらの直線が交わった点をPとして、
$$PA \times PA’ = PB \times PB’$$
が成り立つという定理です。※方べきの定理にはいろんな種類がありこれはその一つです。
証明は簡単です。以下のように補助線を引いて四角形AB’A’Bを作ります。
同じ弧を持つ角度は等しいことを利用すれば、下の図の青い丸と緑の丸で示した角度が等しくなることが分かります。
また、∠BAB’と∠B’A’Pは、三角形の内角の和が180度であることを使えば等しいことが分かります。
\begin{align}
\angle BAB^\prime & = 180 – (\angle ABB^\prime + \angle BB^\prime A) \\
\angle B^\prime A^\prime P & = 180 – (\angle AA^\prime B^\prime + \angle BA^\prime A)
\end{align}
よって、赤い丸で示した角度も等しいことが分かりました。
このことと、△ABPと△A’B’Pは∠Pを共有していることから相似であることが分かります。
△ABP ∽ △A’B’P
よって、
$$PA \times PA^\prime = PB \times PB^\prime$$
であることが分かりました。
では、もとの図形に戻りましょう(下の図)。
これに補助線(点線)を引いて以下のようにします。
方べきの定理で示したように、△QCAと△CPAは相似です。
△QCA∽△CPA
したがって、方べきの定理を使えば、
$$AP \times AQ = AC \times AC$$
となります。
今回は線分ACが円に接しているため、右辺が同じ線分になることに注意です。
これらの線分を\(a, b, c\)で表現してあげれば、
\begin{align}
\text{AP} & = c-a \\
\text{AQ} & = c+a \\
\text{AC} & = b
\end{align}
となり、これらを上の式に代入して、
\begin{align}
AP \times AQ & = AC \times AC \\
(c-a) (c+a) & = b^2 \\
c^2 – a^2 & = b^2 \\
a^2 + b^2 & = c^2
\end{align}
と変形すれば三平方の定理が現れました。
これで直角三角形の角を中心とした円を描いて証明する方法は終わりです。
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円の中に二つの三角形を作って証明する方法
最後は、円の中に二つの三角形を作って三平方の定理を証明する方法です。
まずは円を描いて、その中に円周と円の中心に頂点を持った直角三角形を描きましょう。
ここで、直角三角形の斜辺の長さ\(c\)が円の半径となっていることに注目です。
さらに、この図に補助線を引いていきましょう。
点線で補助線を追加しました。
ここで、青い三角形と緑の三角形は相似です。
証明は簡単で、二つの三角形の頂点Cの角度は90°で共通です。
また、二つの緑の丸を付けた角度は、どちらも弧AEに対する角度です。
これによって、三角形の二つの内角がそれぞれ等しいため、
△DCE ∽ △FCA
となります。
この二つの三角形が相似であるということは、
CF:CD = CA:CE
が成り立ちます。よって、
$$CF \times CE = CA \times CD$$
となります。
これらの長さを図に描きこんでみると、
です。
よって、
\begin{align}
CF \times CE & = CA \times CD \\
(a+c)(c-a) & = b^2 \\
c^2-a^2 & = b^2 \\
a^2+b^2 & = c^2
\end{align}
となり、三平方の定理が証明できました。
これが、円の中に二つの三角形を作って三平方の定理を証明する方法です。
以上、三つの円を使った三平方の定理の証明を紹介しました。
まとめ
- 三平方の定理とは”直角三角形の各辺の長さの関係を示した定理”である
- 三平方の定理を円を使って証明する方法を三つ紹介した。その証明方法は以下の通りである
- 三角形に内接する円を描いて証明する方法
- 直角三角形の角を中心とした円を描いて証明する方法
- 円の中に二つの三角形を作って証明する方法
- どれも図形を使った証明なので、イメージしやすい方法となっている
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ありがとうございます!!
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