”サイクロイド曲線”- それは、もっとも早く滑ることのできる滑り台の形

サイクロイド曲線について、説明します。
唐突ですが、滑り台を考えましょう。
通常の滑り台の形状は直線ですが、なかには直線ではなく曲線の滑り台も存在します。
では、最も早く滑ることができるのは、どんな形状の滑り台でしょうか?
それは、”サイクロイド曲線”と呼ばれる形状をしたものです。これが理論上一番早い滑り台であるとされていますが、実際に実験してみるとどうなのでしょうか。
さらに、その他にも不思議な性質を持っています。それではサイクロイドの不思議に触れていきましょう。
もっとも早く滑るための滑り台に最適な形は?
通常の直線的な滑り台
わたしは子供のころによく滑り台で遊んでいました。
そのときの滑り台の形はたいだいこんな感じです(下の画像)。
画像引用元:名寄幼稚園
滑るところは、始点と終点を結べば大体このように直線ですよね。
滑り台の上から下の地点まで一番滑り降りるとき、一番早く降りることができる滑り台の形はいったいどんな形なのでしょうか?
このような問題を”最速降下問題”と言ったりします。
最速降下する形はどんな形でしょうか?みなさんの直感はどうですか?
私は、直線が一番早く滑れる形だろうと思っていました。
その理由は、始点と終点を結んだとき、一番距離が短くなるのが直線だからです。みなさんもそう思いませんか?
でも、違うんです!
直角に曲がる滑り台
直線以外の形状も少し考えてみましょう。どんな形状が考えられるでしょうか?
その場所から真下に落ちて、あとは直線という形はどうでしょう?(下図の青線)
ボールは始点から自由落下を開始します。地面に近いところで一気に角度を変えてやり終点を目指します。
これは速そうですね。(子供たちが遊ぶには少々危険と思いますが…)
実際にこんな滑り台があるのかを探してみると、似たような形状の滑り台が実在しました(驚)。
コレ、実際すべると、結構怖いと思いますよ。
サイクロイド曲線の滑り台
もっとたくさんの形状が考えられますが、さっそく正解にいっちゃいます。
それは、”サイクロイド曲線”の滑り台です。
サイクロイド曲線とは、円を転がしたときに円の外周の一転を繋げていったときにできる曲線です(下の図)。
引用元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cycloid_animated_.gif
これを滑り台の形として描くと、
赤い線のようになります。
この三つの滑り台のうち一番早く滑れるのはどれでしょう。実際にボールを滑らせるところを見てみましょう。
滑らせてみる
下の画像は三パターンの滑り台で同時にボールを離したときの様子です。
どれが一番早いか分かりましたか?
赤い線の”サイクロイド曲線”の滑り台ですね。
そして、直角に曲がる滑り台は、通常の直線のものよりも遅いという結果になりました。
”サイクロイド曲線”は
すべての形状で一番早く滑り台をすべることができる
という性質をもっています。
この性質は数学的に証明されています。ここでは、証明はしませんので、興味のある人は以下のページをご覧ください。
なぜサイクロイド曲線で最速降下するのか
なぜサイクロイド曲線で最速降下するのかを考えてみましょう。
数学を使った厳密な証明はしませんが、
- なぜ直線型(通常の滑り台)と直角型の中間に線が引けて(下図の赤線)、
- 徐々に傾きが変わっていく曲線になるのか
を感覚的に理解することを目指します。
滑り台を早く滑るための条件を考えましょう。それは、以下の二つです。
- 始点と終点までを、できるだけ短い距離で結ぶ
- なるだけ早くトップスピードに達する
まずは、1の条件について考えましょう。
1を満たすには、直線型(通常の滑り台)が一番良さそうですね。これより距離を短くする方法はなさそうです。
一方、直角型は1に対してはあまりよくありません。直線型と比較して終点にたどり着くにはかなり遠回りしています。
次は2の条件について考えましょう。なるだけ早くトップスピードに達するには、直角型が一番良さそうですよね。滑るというより落下ですから、加速度は文句なくナンバー1です。
直線型は条件2に関しては、直角型には及びません。
このように、
- 条件1では、直線型がもっとも良い
- 条件2では、直角型がもっとも良い
となりました。つまり、この2つの条件をバランスよく満たすと、一番早い滑り台が作れるというわけです。
そうです。上の図を見るとわかる通り、サイクロイド曲線は直線型と直角型の間に位置しており、2つの条件をイイ感じに満たしているので、最速降下するのです。
では、もう少し詳細にサイクロイド曲線を観察してみましょう。
よく見ると、滑りはじめの傾きと、滑り終わりの傾きが違いますね(下の図)。
これは、なるべく早くトップスピードに達するために、このような傾きの違いがあるのです。
早くトップスピードに達することができれば、残りの距離を素早く滑ることができますからね。
以上が、数式を使わずにサイクロイド曲線が最速であることをイメージするための説明でした。
サイクロイド曲線の他の性質
サイクロイド曲線は他の性質も持っています。それは、
どの高さからボールを落としても同じタイミングで終点に着く
ということです。
これも難しい数式で証明されていることですが、ここでは深く触れないことにして実験の様子だけ見てみましょう(下の画像)。
ボールをサイクロイド曲線上で同時に離していますが、離す位置が違います。
それでも、最終的にボールが終点に達するのは、ほとんど同時です。(理論的にはまったく同じになります)
まとめ
- 滑り台を最も早く滑ることができるのは”サイクロイド曲線”
- ”サイクロイド曲線”では、どの位置からボールを離しても終点に着くのは同時
ディスカッション
コメント一覧
自由研究でサイクロイドをやってるから、とても役に立った!ありがとうございます
lt was so useful contents for a free study
多分「それは自由研究にとても役に立つ内容でした。」て意味です。分かりづらくてごめんなさい。
図や動画で非常に分かり易い説明で良く理解できた。